ちなみに手紙にある土井の事務所は、墨田区にあるサハダイヤモンドビルに置かれ、そこには土井やカミンスカスだけでなく、北田文明(編集部注/地面師業界の大物で、積水ハウス事件の主犯と目されたが不起訴となった。現在は別の地面師事件で服役)もいた。カミンスカスはまるで引っ越し作業のように書いておきながら、同じ手紙では、土井に海老澤の異父弟である鳥海兄弟と交渉する段取りを頼んでいることを認めているのだ。
〈鳥海兄弟に会わせてやると(土井に)言われて3000万円も取られています〉(同)
もとよりこれらは、法務局から海喜館の所有権移転登記が却下され、海老澤佐妃子のパスポートなど取引書類の偽造が明るみに出たあとの行動である。前に書いたようにカミンスカスは地面師詐欺が発覚した2017年6月以降も、内田マイクや土井たちといっしょに動いている。
〈6月9日積水ハウスに呼ばれて登記が出来ないと言われた時点で羽毛田がなりすましとは思えませんでしたが、その後連絡が取れなくなって、土井に何とか羽毛田に連絡を取る様にたのみました。土井から「もう逃げたんじゃない」と(言われ、犯行の事実が)決定的になりました〉(同)
それぞれが思惑を抱き
騙し合っていた地面師たち
おまけに地面師一味は、箱根の名門大箱根カントリークラブに集結し、なりすまし役の羽毛田や内縁の夫役の常世田を逃がそうとしているのだ。カミンスカスはなりすまし犯の逃匿謀議には加わっていないと言い張るが、その舌の根も乾かぬうちにこう書く。
〈土井は6月の9日以後、私と出来るだけ会わない様にしていました。ゴルフも何回か行って土井に羽毛田の件を聞きましたが、「知らない」「もう逃げてるよ」と言われました〉(同)
語るに落ちたとはまさにこのことではないか。カミンスカスは積水ハウスが騙し取られた55億5000万円についてこうも書いていた。
〈55億円の内15億円は生田[生田は羽毛田から実質55億円で買って70億円で転売した]。40億円は後日談ですが1週間ぐらいで現金化して(江東区の)森下の土井の事務所に届けられたと聞きました。[刑事の話]現金化の手数料や裏切りによって多少減ったとしても30億円は土井の手元に行ったと思います〉(同)
『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(森 功、講談社)
ネットフリックスのドラマでハリソン山中を演じた豊川悦司をはじめ、綾野剛や小池栄子たち地面師グループは統率がとれ、隙がないように描かれている。だが、実際の地面師はそれぞれがばらばらの思惑を抱き、騙し合っていた。事件後、積水ハウスから騙し取った55億5000万円の取り分にも食い違いがある。
カミンスカスへ30億円も渡っていると推測する土井は、カミンスカスと同じ11年の懲役判決を受けて茨城県の水戸刑務所に収監された。そこから2025年には東京都昭島市の東日本成人矯正医療センターに移される。その土井からも手紙が届いた。土井もまた冤罪を訴えていた。







