管理職になりたくない若者が増えていると言われている。「多少給料が上がったところで仕事が大変になるなら、平社員の方がいい」と考える人が増えているのだ。企業や行政などを対象に、働き方改革や組織改変などに携わっている沢渡あまね氏は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』で、「管理職が『何をしているかよくわからないが忙しそうな人』になっていないか」と問題提起する。若者が「管理職も悪くない」と思える組織にするには何が必要なのか。本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍編集局)

出世する気がない若者Photo: Adobe Stock

「大変な思い」をするなら出世したくない若者たち

 かつては、男性は総合職で一般職や事務職は女性のみという時代があった。

 2015年あたりか、ニュースで男性の一般職採用が話題になるなど、男女ともに「大変になるなら出世しなくていい」と考える人が増えていったように思う。

 責任が重くなる一方で給料が劇的に上がるわけではない「管理職」への魅力が低下したのが大きな理由だろう。

 筆者も会社員時代に主任になった際、「これ以上管理職として出世したくはないな」と思ったことを覚えている。

 出世したくない理由は、「大変そう」だからだ。そのため、「管理職になりたくない」という若者たちの気持ちはよくわかる。

 数万円もらうよりも、気楽に働きたいのだ。

 しかし、このように「若い世代に昇進の意欲がなく、いつまで経っても管理職の顔ぶれが変わらないのも問題である」と沢渡氏は指摘する。その理由は次の通りだ。

仕事のやり方や価値観がアップデートされず、さまざまな面で時代に取り残されてしまう。
指示を出す側、出される側の関係が何年も固定化すると、思考もその関係性に最適化されていく。結果、メンバーが自主的に行動する機会が奪われ、ボトムアップによる主体的な行動が生まれにくくなる。(P.185)

 思い起こすと、確かに前職でも部課長はいつも同じメンバーだった。そうなると経営方針も変わらないし、いつも同じような問題が起こっていたように思う。

 しかし、成り手がいない以上、仕方ないのではないかと、筆者もどこかで納得していた。

「管理職=大変そう」が生まれる理由

 沢渡氏は、若者が管理職になりたがらない理由として、現在の管理職の人が「『何をしているかよくわからないが忙しそうな人』になっていないだろうか」と問いかける。

それでは誰も管理職になりたがらないのは当然である。若手がなりたくないのは管理職ではなく、「あなたのような管理職」なのだ。(P.186)

 確かに、筆者も上司を見て「管理職があんなに大変そうならなりたくない」と思っていた。そして、主任になった筆者を見て、そう考えた若手もきっといたことだろう。

 一体どうすれば「管理職=大変そう」というイメージから抜け出せるのだろうか。

見えない仕事は、恐れられる

 沢渡氏は、そのための方法として、マネジメントの一部を手放すことを提案する。

課長の仕事の一部を、課長代理や主任に任せてみる。主任の仕事の一部を、現場の人に任せてみる。マネジメントの仕事を再定義、または丁寧に分解し、やめるものはやめ、改善および効率化をする。チームのメンバーに任せるものは任せる。このようにマネジメントの権限や負荷を分散させることで、管理職のしんどさも軽減される。しんどそうなイメージも払拭される。(P.186)

 そんなことをすると「代わりに任された側がしんどくなって、ますますマネジメントの仕事を嫌いになるのでは?」と思ってしまいそうだ。

 しかし、沢渡氏は「それは思い込み」と指摘する。「なぜなら管理職の仕事の見えにくさもまた、しんどそうなイメージを助長しているからだ」と語る。

 見えないもの、わからないものだから恐れを感じているだけであり、マネジメントの仕事にもやりがいや楽しさがある。にもかかわらず、それが伝わっていないのが問題だというのだ。

 確かに、体験してみた上で「自分には合っていない」と思う人がいる一方で、「こういう仕事、結構面白いかも」と感じる人が出てきてもおかしくはない。

 誰にでも向き不向きはあるし、体験してみるまでは「大変そう」はイメージに過ぎないのだから。

権限を委譲されて感じるやりがいもある

 管理職になることは、任される権限が大きくなるということなので、そこにやりがいを感じる人もいるだろう。

 沢渡氏は、課長代理の頃から課長の仕事を一部任されていたことから、チームや人のマネジメントだけでなく、1000万円単位の金額を回していたという。そして、その体験から次のようなことを感じたそうだ。

おかげで、非管理職の頃からマネジメントの体験、会社のお金を使う経験を積むことができた。(中略)
ビジネスパーソンとしての視座が上がり、経験値と素養も高まったため、今でも感謝している。
同時に、マネジメント業務の面白さと醍醐味を体験できた。管理職をやってみてもいいかな。そんな気持ちが芽生えた。(P.187)

 また、マネジメント経験の不足は「指示待ち体質が生まれてしまう要因にもなる」と指摘する。

 確かに、マネジメントしなければならない立場になるとその立場の大変さもわかるし、上司に対して「このように動けば助かるだろうな」と推察できるようにもなる。

 全体を見て、「次に何をしなければならないか」を考える癖もついてくるだろう。

 そうした機会は、意識的に若手に体験させていかなければならないのだ。

 沢渡氏は「マネジメント体験の創出こそ何よりの人材育成であり、あなた自身も身軽になれる。メンバーと同じ景色を共有できることの効果も大きい」と語る。

 任命されてマネジメントをするのではなく、マネジメント体験をすることで、やりたい、やってみようと思うようになり、その結果マネージャーとして任命される。

 マネジメントを任命後に学ぶものとするのか、任命前から体験できるものとするのか。

 その設計の違いが、若者の意欲を左右するのだ。