この世界規模での他者との比較合戦には終わりがありません。比べる対象は雨後の筍のように無尽蔵に湧いてきます。みんなが参照する価値観が収斂していて、「あの水準に達すればまあ満足」「権威者に承認されることで安心」といった社会とは異なり、生きる意味は自分で見出し、獲得し、自分で自分を慰撫してあげなければなりません。

 そこに到達する方法はいくらでもありますが、どれも簡単ではありません。

 経済的な側面はどうでしょうか。年収1000万円を獲得すれば安心でしょうか。でも、老後資金に2000万円を貯めておかなければ熟年破綻するという情報も漏れ伝わってきますし、インフレも激しくなると言われています。

 では年収2000万円を目指せばよいのでしょうか。しかし、シリコンバレーでは年収2000万円でも貧困層扱いされると書かれたポストが目に入ります。世界中を相手にする情報戦でこれを繰り返していれば、きりがありません。

現代人にとって「いいね」は
居場所と安心感の源泉

 そもそも流れている情報が嘘か本当かもわからないのです。こうした状況下で満足を得るには、死ぬほど運に恵まれて大金持ちにでもなるか(それでも上には上がいそうです)、仙人のような境地に至ることが要求されます。

 でも、視線をサイバー空間に向ければ、別の可能性が広がっています。他人からの称賛です。他人からの称賛は圧倒的な悦楽です。上司から労われるよりも、給与のベースアップよりも強烈な快楽です。

 しかも町内会で褒められるのとはわけが違います。100万人、1000万人の人が自分の投稿を見てくれたり、「いいね」をしてくれたりするのです。1000万人の人が自分を承認してくれるのです。その瞬間、絶対的な安心感が胸に広がります。

 実際のところ、現代人にとって、このXでの万バズや「いいね」は居場所と安心感の源泉であり、活動の駆動原理になっています。

 観光地で観光資源を見ずに写真に撮ってAIで補正するのも、次の日にはメルカリに出品するのにブランドアイテムを買ってくるのも、好きでもないサウナで整ってみせるのも、Xに投稿して社会に居場所を確保するためです。この活動に現代人は多くのリソースを割いています。