燃料電池車、自動運転の担当を経て、新型ルークスの開発責任者に

 当たるか当たらないかも分からない、10年先、20年先の「クルマの未来」を見越して様々な技術に取り組む「研究」部門。2~3年後には販売されるクルマに実装される「先行開発」部門。そして実際に販売されるクルマの開発を行う「製品開発部門」。

 軽自動車の工場を持たない日産が、開発だけを受け持つ珍しい“流れ”のクルマ、「ルークス」の開発責任者である坂さんは、開発部門の上流から2番目に当たる先行開発部門でキャリアを積み、一時期パッと盛り上がって、その後に尻すぼみになってしまった燃料電池自動車(FCV)の開発を担当した。当時は重いバッテリーを積んで走るBEVよりも、FCVの方が「有望株」と見做されていたのだ(その後の展開は読者諸兄もご存じの通り)。

 FCVが一段落着くと、その後は自動運転。しかしこちらの方は「アライアンスの関係もあり、残念ながら詳しくはお話しできない」とのことだ。

日産自動車 第二製品開発本部 第二製品開発部 第一プロジェクト統括グループ 車両開発主管 坂 幸真さん日産自動車 第二製品開発本部 第二製品開発部 第一プロジェクト統括グループ 車両開発主管 坂 幸真さん Photo by AD Takahashi

 車両開発の責任をすべて受け持つCVE(チーフ・ビークル・エンジニア)にアサインされたのは、今回のルークスが初めてのこと。そろそろ定年が見えてきた頃に、「お前、CVEに興味あるか?」と上司から打診された。

 坂さんは時代の最先端、自動車技術の最先端を担ってきたエンジニアだ。

 しかも技術の日産、走りの日産である。2000年代初頭から軽自動車を販売はしてきたが、それはあくまで他社からのOEM供給で、日産が独自開発してきたクルマではない。「軽自動車の担当」に抵抗はなかったのか。

 その問いに対して坂さんは「微塵もない」と即答した。

 日産にはたくさんのエンジニアがいる。だがひとつの車両の総責任者にアサインされる人間は限られている。その栄誉は軽でも高級車でも同じ価値である、と。

 坂さんが造った軽は極上品で、ひとたび運転すれば「これが軽なのか……」と嘆息するほどの仕上がりだ。新型日産ルークスの開発秘話、後編をお届けする。