でも、ちょっと待ってください。その前にもっと話を広げて確認すべきことはあるのではないでしょうか。「それは大変でしたね」と受け止めつつ、「具体的にどんな点が負担に感じますか?」「作業内容が変わったのですか、自分の受け止め方が変わったのですか?」などと、部下の気持ちに寄り添いつつも、背後にある状況をよりくわしく確認することが必要です。

 このように1on1ミーティングで重要なのは、「相手の話を聞ききること」です。上司としての責任を感じすぎると、部下の不満や要望に振り回されて疲弊してしまいます。

 すべてに答えを出す必要はありません。「それは大変だったのですね」「その気持ち、よく分かりますよ」と相手に寄り添い、受け止めるだけでも、部下にとっては十分に価値のある時間になります。

 私がこう自信を持って言えるのは、自身の経験に基づいています。部下の悩みや問題は、多くの場合、マネジャー1人では解決できないものです。以前は私自身、部下から相談を受けても明確なアドバイスができず、「自分は役に立っていないのではないか」と悩んでいた時期がありました。

 しかし後に、かつて相談された部下から「当時、あなたと話す時間や、かけられた言葉に大きく励まされました」と聞き、自分では意識していなくても、相手の心にポジティブな影響を与えていることがあるのだと気づくことがありました。

 それ以来、1on1ミーティングの時間を負担に感じることはなくなり、ありのまま親身に話を聞き、一緒に考えるスタイルを大切にするようになったのです。

手ぶらでは臨まずに
事前にしっかり準備する

 対話の本質は業務報告ではなく、「相手を理解し、成長を支援すること」にあります。少し青臭いと思われるかもしれませんが、「最近、自分にとって意味があったことは何ですか?」「ここ最近の仕事で自分らしさを発揮できたのはいつでしたか?」などというふうに、成果に直結しないように見えるテーマや質問も検討してみてはいかがでしょうか。

 こうした少し趣きの異なる話題を振ることで、結果として議論の深さや信頼関係の構築スピードに大きな差が生まれるきっかけになります。

 1on1ミーティングの雰囲気やトーンは、マネジャーの姿勢によっても大きく左右されます。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』書影Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(中谷公三、諸橋峰雄、水野ジュンイチロ ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 だからこそ、無計画に手ぶらで臨むのではなく、部下の状況や過去の対話内容を踏まえて、事前にテーマや質問を準備することが重要です。

 メンバーがあらかじめアジェンダを用意していた場合、具体的な1on1ミーティングの事前準備としては、次のようなポイントを押さえておくことをおすすめします。

アジェンダの確認:メンバーが用意したテーマを事前に確認し、優先順位を整理する
質問の準備:気づいた点や掘り下げたいテーマについて、オープンな質問を考えておく
方向性の検討:どのようなサポートが必要か、自分として提示したい選択肢やリソースを用意しておく

 こうして1on1ミーティングを設計しておくことで、毎回の対話がメンバーの成長を促し、チーム全体の成果につなげていくことが可能になるのです。