職業差別がなくなったように見えて
差別のラインが変わっただけ

 そうした特殊日本的「管理職」概念を生み出したのは、戦時中から戦後にかけての時期に起こった日本企業における経営秩序の大変革でした。

 それを分かりやすく図解したものとして、野村正實の『日本的雇用慣行―全体像構築の試み』(ミネルヴァ書房、2007年)に掲載されている次の2つの図があります。

 この図は、かつて『働く女子の運命』(文春新書、2015年)でも引用しましたが、そのときは同書の問題意識に基づき、図の左側の男性と図の右側の女性の位置付けが、戦前と戦後で変わったように見えながら実はそれほど変わっていなかったということを強調するためでした。

図1:戦前の会社身分制同書より転載 拡大画像表示
図2:戦後の経営秩序同書より転載 拡大画像表示

 しかしながら、図の上側と下側の関係に着目すれば、戦前と戦後では大きく変わっていることが分かります。

 一番大きく変わったのは、身分における差別ラインが、戦前はホワイトカラー職員(準社員)とブルーカラー職工の間に引かれていたのが、戦後はブルーカラーの中でも本工(正規労働者)と臨時工・社外工(非正規労働者)の間に引かれるようになったという点です。

 これはホワイトカラーもブルーカラーも会社の従業員(社員)として平等であるという戦時中から戦後にかけての時期の思想が生み出した社会変革であり、とりわけ終戦直後期の工職身分差別撤廃運動など、戦後労働史研究で最も注目されてきた点です。