しかしながら、これはあくまでも差別ラインを1段下に押し下げただけであって、差別ラインをなくしたわけではありません。

 職員と同様の社員という身分を手に入れた本工と、そこからこぼれ落ちて社員という身分から排除された臨時工・社外工の間には、まさに身分的な差別待遇が積み重なり、今日に至る身分としての非正規労働問題を生み出してきました。これは労働問題の本には必ず出てくる話です。

エリート職員は消え
みなで幹部の座を争うように

 しかし、あまり目立ちませんが、戦前と戦後の間にもう1つ変わった点があります。それは、戦前の社員(男)と準社員(男)の間に引かれていた実線が、戦後の幹部社員(男)と事務員・技術員(男)の間では点線に変わっている点です。

 そして、そこに外部から労働力が供給される仕方も大きく異なっていました。

 戦前は高等教育卒(大卒及び専門学校卒)が直接社員層に採用され、採用当初から幹部職員見習として待遇される一方、中等教育卒(実業学校卒)はその下で働く準社員層に採用され、特定の専門業務に従事し、長年の勤務を経て幹部に昇進することもあるなど、両者は同じホワイトカラーといっても明確な身分格差の下に置かれていました。

 これに対し、戦後は大卒も高卒も幹部職員ではなく事務員・技術員として、つまり戦前の準社員レベルで採用され、そこから幹部職員に昇進していくべき存在と位置付けられるようになったのです。

 ホワイトカラーとブルーカラーの平等化は、同じ社員という身分の平等と、残業代のつく月給制という賃金制度の平等を達成しましたが、両者が同じキャリアを歩むというわけではありません。

 ブルーカラー本工は、工場内を配置転換されてさまざまな仕事を経験しつつ、現場の監督職に昇進していきますが、管理職につながるホワイトカラーのキャリアとは通常は交差しません。

 これに対し、ホワイトカラー内部の平等化はより本質的なキャリアの平等化をもたらしました。一言でいえば、戦前には存在した、はじめから幹部扱いのエリート職員という身分が消えてしまったのです。