しかしそれは、世間の勝手なレッテルである。そんなさなかも当人は、貪欲に映画作りに没頭し、より良い映画を作るという自身の夢に向かって努力を重ねていたのである。

 そして、リドリー・スコット、マーティン・スコセッシという、作家性と商業性を兼ね備えた一流監督の作品への出演を次々と実現するのだった。

オスカーを受賞するのは
クルーズの共演者ばかり

 大スターの地位を確立した『トップガン』と同じ年に公開された『ハスラー2』でクルーズは、実際のオスカーに一段と近づく。『ハスラー2』で主演したポール・ニューマンが初めて、オスカー主演男優賞を手にするのだ。クルーズはこの作品で、ニューマンに挑戦する若きハスラーとして、2番手の配役だった。

 それまで何度もノミネートされながら受賞を逃してきたニューマンに、念願のオスカーをもたらした相手役は、他でもないクルーズだったのである。ニューマンはクルーズにとって、子供の頃からの憧れの存在であり、ヒーローだった。

 その後のクルーズのインタビューでもニューマンの名前が良く登場するところを見ると、この作品で2人は真の友情を育んだことが窺える。昔から憧れて来た名優に念願のオスカーを授けることが出来たクルーズは、さぞ嬉しかっただろう。

 そしてもう1人、クルーズが「憧れの存在」を聞かれてほぼ毎回必ず一番先に名前を挙げてきたのがダスティン・ホフマンである。

 ポール・ニューマンに初のコンペティティブオスカー(各部門で競い合って選ばれる賞)を授けた2年後の1988年、クルーズは再び共演者の名優にオスカーを与えることになる。それが他でもない、彼の一番の英雄ダスティン・ホフマンだった。

 2年前の『ハスラー2』が王者に挑戦する若者の役だったのに対し、ホフマンと共演した『レインマン』でクルーズは、既にホフマンと対等のダブル主演の座につく。

 これが顕著にわかるのが、『ハスラー2』のポスターでは必ずニューマンより小さい画角になっているクルーズの肖像が、『レインマン』ではホフマンと常に同じ大きさで扱われていることである。1988年の時点では実際に、ホフマンよりもクルーズの人気の方が高かった。