ガンダム・ジークアクスの舞台裏#12Photo by Noa Asanuma ©創通・サンライズ

ガンダムというIPをいかに成長させていくか。バンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘・ガンダム事業本部長が掲げるのが、世界市場と次世代の開拓だ。現在計画が進むハリウッド実写版映画の進捗や、長寿IPを50年、100年続けるために重視していることとは。特集『ガンダム・ジークアクスの舞台裏』(全13回予定)の#12では、#7#8に続き、小形本部長のインタビューを掲載。新人時代から関わりがあるという富野由悠季総監督は今後ガンダムにどう関わっていくのかについても語ってくれた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

50周年に向け「世界市場」に再注力
北米・欧州でガンダムを広めていきたい

――ガンダムIP(知的財産)の強みと課題は何でしょうか。

 国内とアジアに関しては、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のおかげで、かなりのボリュームゾーンにガンダムが認知され、商品物販を含めて非常に強い。一方、課題は北米や欧州などの世界市場で、ここは伸びしろがまだ大いにあります。

 ジークアクスは全世界同時配信し、世界で劇場公開もしていますが、今日本のアニメは、新型コロナウイルス禍以降に普及した配信サービスのおかげですごく海外に出やすくなっており、これはチャンスです。世界の皆さんにいかに映像を見てもらい、かつガンプラをはじめとした商品と一緒に、ガンダムIPを楽しんでもらうか。これは直近の課題として、バンダイナムコグループ全体で最も注力しているところです。

 ガンダムは映像事業では、日本が65%、海外が35%くらいの売上比率です。ゲームなどは、他のIPですが作品によっては海外が9割などのものがありますので、まだまだわれわれも米国や欧州を伸ばせると思います。これは2029年の50周年に向けた今後の数年間、ガンダム事業の大きな目標となるでしょう。

 7月に開催されたサンディエゴ・コミコンでは『新機動戦士ガンダムW(ウイング)』30周年を記念して新作プロモーションビデオを発表しました。ウイングは2000年に北米で最初にテレビ放映されたガンダムシリーズで、根強いファンがいらっしゃいます。ウイングの放映後、続けてファースト(『機動戦士ガンダム』)を流そうとしたのですが、ちょうど同時多発テロが発生し地上波テレビで戦争アニメを流せなくなってしまいました。

 でも、また米国でも展開していきたいですね。コロナ禍の巣ごもり需要で、北米を中心とした海外でガンプラ需要が一気に高まり、売り上げも増えました。北米のお客さんに喜んでもらえるように、映像側もしっかりやっていく計画を立てています。

――今後はハリウッド映画のガンダム実写版の製作と公開がありますね。また、今後ガンダムを中長期的に続けていくためにはどのようなことが必要でしょうか。そして、最近メガホンを取っていない富野由悠季総監督が、今後ガンダムにどのように関わっていくのか教えてください。

「富野作品を定期的に見ないと体調が悪くなる」という小形氏は、新人時代から富野由悠季総監督と関わりが深い。富野氏が現在関わる作品と、ガンダム次回作およびシリーズの今後についても語ってくれた。