「勉強ができるからほめるのではなく、ほめることで自己肯定感が上がり、子どもは勉強が好きになる」――進研ゼミの「赤ペン先生」全国代表である佐村俊恵さんは、こうした信念を持って、多くの子どもたちと接してきた。赤ペン先生の間で受け継がれる「ほめノウハウ」を使いながら、20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案を見続けてきたという。
この記事では、佐村さんの新著『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』の発刊を記念して、「赤ペン先生」全国代表である佐村さんの特別インタビューをお届けする。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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「成績以前」に大切なこと
――佐村先生は、多くの子どもたちの答案を見てきたと思います。そのなかで「この子は地頭がいいな」と思われる子たちには、どんな共通点があったのでしょうか?
佐村俊恵(以下、佐村) 私の感覚で言うと、地頭のよさとは、いわゆる成績の良し悪しとは違うところにあると思っています。たとえば、「長い話をひとことで的確に要約できる」「1を聞いて10のことがわかる」「ものの例え方が上手」。そういった力のことなのかなと感じています。
つまり、一つのことを聞いたときに、考え方のフィールドをいかに広げられるか。自分でどれだけ思考を深められるか。そういうところが「地頭のよさ」なんじゃないかと思いますね。
――そういった能力は後から伸ばせるものなのでしょうか?
佐村 私の経験からのお話になりますが、伸ばせるものだと思っています。ある知人の娘さんのお話なんですが、小さい頃から自分の意見をはっきり言える子で、年齢が上がるにつれて「この子、こんな発言もできるんだ」と驚かされることが増えていったんですね。
その理由は何かと考えてみると、その子のお家にはテレビがなかったんです。
じゃあ何が娯楽かというと、ご家族そろって本を読むことだった。本は「読まなくちゃいけないもの」ではなくて、「当たり前のように楽しむもの」というご家庭だったんです。その子は図書館にも毎日のように通っていて、小学校高学年にはもう大人が読むような本を読んでいました。
本が「好き」なら、本の読み方が変わる
――なかなかハードルが高そうですね。
佐村 無理をする必要はありません。好きな本を読めばいいと思うんです。嫌なら、やらなくていい。一番大事なのは、私はこれが好き、これができる、という「自己肯定感」、つまり、ありのままの自分を、価値のある存在として認めることです。
本が好きな子は、好きでやっているので、ただ文字を追うことはしません。
本を読みながらその場面を頭の中にありありと思い浮かべることができます。イメージを広げ、想像する力を日常的に鍛えることが、目に見えない相手の意図を汲み取ったり、物事の背景を推察したりする「地頭のよさ」につながっていくのかなと思います。
また、子どもは子どもなりにいろいろな考えや言いたいことを自分の中に抱えていますが、それらを表現する「言葉」を、最初のうちは持ち合わせていません。しかし、読書を通じて「外部の言葉」に触れることで、いわゆる「言語化力」が鍛えられていく。その過程で、自分の思考をうまく整理できるようになっていくのではないでしょうか。
もちろん、読書だけではなく、その子のおじいさんがしょっちゅうイベントに連れ出してくれるなど、その子の周りには探究心を育てるようなワクワクする環境が整っていたということもあります。いずれにせよ、地頭というものがあるとしても、それは親の伴走や環境しだいで伸びていくものだと思います。
おたよりコーナーの回答から、家での会話が見える
――「親の伴走」としては、どういったことを心がければいいでしょうか。
佐村 赤ペンには、月ごとに替わるテーマに対して子どもたちが自由形式で答える「おたよりコーナー」があります。その答えを見ていて思うのは、こちらが思わずクスッとさせられたり、「へえ」と感心させられたりするような、それこそ「地頭のよさ」を感じさせる回答には、その背景に「おうちの方とのコミュニケーション」が感じられるということです。
たとえば「好きな食べ物は何?」という問いかけ一つとっても、ご家庭での様子がよく見えるんですよ。「シシャモのたまご」「
そういう「ウィットに富んだ答え」が、聞かれたときにスッと出てくるのは、日ごろからおうちの中でそういう会話が活発に交わされているからこそではないでしょうか。
「こういう場面であなたならどんなセリフを言う?」といった自由記述の問題にも、その子の個性のようなものがよく現れます。そこで自分の気持ちをしっかり言葉にできる子は、やっぱりおうちの方といろいろな会話をしているんだろうなと感じますね。
(本記事は、佐村俊恵著・ベネッセ「進研ゼミ」監修『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』をもとに作成しました。)




