ひとつ目は「憧れ」でした。
音楽教師が主人公の小説『虹色のコーラス』を読んでいると、感動で涙が止まらなくなり、そのとき「ピアノが弾けるのって素晴らしいな」という「憧れ」が生まれました。
ただ、それがきっかけのひとつではあったものの、それだけで実際に行動に移せたかと言えば、そうではありませんでした。忙しい毎日です。ピアノが弾けたらいいなぁという「憧れ」は生まれたものの、西田敏行の歌のように「もしもピアノが弾けたなら」という仮定のまま一歩も進まなかったのです。
そんな折に生まれた、ふたつ目の動機が「成長欲求」でした。
60歳にさしかかろうとするなか、何か新しい脳トレをしなければ……という思いが日に日に増したころ、ネットで「脳トレ」と検索すると、ピアノ演奏が最高の脳トレだと知るに至ったのです。
(そうか、ピアノ演奏ってそんなに脳トレ効果があるのか)
じつは、今の私がピアノを継続できている最も強い動機は「脳トレ」ですが、当時の私にとってピアノを始める駆動(くどう)力(ある反応を引き起こす力)としては「憧れ」と「脳トレ」のふたつではまだ不充分でした。
何かもうひとつが足りなかったのです。
そんな私にピアノを始めさせる決定打となった3つ目の動機は、親友Nへの「友情」でした。
Nは、還暦を迎えて「新しいことを始めるには、もう年をとりすぎている」と弱気な発言をしました。私はなんとか激励したいと思い、彼の大好きな松田聖子の曲をピアノで弾いてサプライズ・プレゼントをしようと決意したのです。
長続きのコツは動機を「自ら」探すこと
かくして「ピアノが弾けたらすばらしいな」という「憧れ」と、最高の脳トレになるという「成長欲求」に加え、親友Nを激励したいという「友情」の3つが重なり、「沸点」に達したのでした。
今思うに、この3つの動機それぞれが重要な役割を果たしており、もしひとつでも欠けていれば「沸点」に達することはなかったでしょう。







