動画で耳と目から知ることよりも
本を読んで知ることの重要性

 私は確かに「わかりやすい」解説を心掛けてきましたが、そのためにはわかりづらい、歯ごたえのある本もたくさん読まなければなりません。

 私の解説はあくまでも「入り口」。本業である本や原稿の執筆も同様で、「池上さんの本はわかりやすい!」と言っていただけるのは大変ありがたく嬉しいことでもあるのですが、そこを入り口に、さらに自分の「わからない」を追求してもらいたいのです。

 そのためには、やはり読書が必要です。

 動画で耳と目から知るのではなく、活字を見て、頭の中で想像する。動画なら相手の表情から「不快なのか、喜んでいるのか」を判断できてしまいますが、読書の場合は書かれている文字からそれらを想像する必要があり、これによって読み取る力が養われるのです。

 小説を読めば情緒的読解力、つまり他者の心情や立場を慮る能力が養われますし、論文などを読めば、論理的読解力、つまり相手の主張を理解し、多角的に物事を考える能力が養われます。

 今はチャットアプリや、ChatGPTとの間でテキストのやり取りをする場面が増えています。しかしこれらはあくまで短文の会話形式のやり取りで、限りなく会話に近いものです。

 さらにこうしたやり取りでは、絵文字やスタンプ、顔文字などで心情を補うことができるために、文字によって相手に真意を伝えようとする言い回しを練る機会が失われています。

 ただ、言語ではなくイラストで心情を相手に伝えるLINEスタンプは、私も便利なのでついつい使っていることを告白します。

「わからないことがあったら聞いてね」は
部下や新人に不親切

 さて、職場にも多くの「わからない」が潜んでいます。

「わからないことがあったら聞いてね」

 職場などで新しくメンバーに加わった人に、良かれと思ってかける言葉の1つが、この「わからないことがあったら聞いてね」です。

 声をかけるほうとしては、「仕事を進めるうえで行き詰まった時には早めに声をかけてほしい」「質問しやすい空気を作るために、こう言っておくのがいいだろう」といった動機から、そう言っているのではないかと思います。