なぜ記者として入局した新人にまで収納業務を経験させたのか、納得のいく説明はありませんでしたが、おそらく自分たちの給料が受信料で成り立っていることを局員に意識させるとともに、視聴者との直の接点を持たせるためだったのではないかと思います。
右も左もわからない
配属2日目の新人記者
駆け出し時代の仕事が、思いがけず将来の糧になる。先般のやり方を見よう真似で覚える。いずれも社会人になれば誰しも少なからず経験することだと思いますが、それらとはまったく違っていたのが、記者の仕事です。
記者としての仕事は、各地の放送局に配属になってから始まります。私は地方記者になりたいという小学生の頃からの望みをかなえて、島根県の松江放送局の配属になりました。初任地の「配属ガチャ」は大当たりだったのです。
ところが、実際に松江放送局に配属されてみると、いきなり壁にぶつかることになりました。先輩記者が初日こそ、取材先に連れて行ってくれて、「警察署を回って事件や事故がないか確認しろ」などと教えてくれますが、あとはほったらかし。翌日からは、何も教えてはくれないのです。
「何をすればいいんですか」と聞いても「自分の頭で考えろ」の一点張り。指示は極めて漠然としていました。
「とにかく毎日警察署に行って、デカ部屋(刑事課)に顔を出していれば、何かあればわかるから」「異常があったら気がつくから、その時に取材しろ」など。そんなことを言われても、顔を出すというのは挨拶回りをすればいいのか、異常とはどんな状態を指すのかなど、細かいことはまったくわからないのです。
赴任して2日目からは1人で取材先を回ることになります。
毎朝、まずは警察署に行く。顔をのぞかせて挨拶しても冷たい態度でにらまれておしまいです。
3日目、4日目と「嫌だな、またにらまれるんだろうな」と刑事課に向かう足取りも重くなるのですが、仕事だからと自分に言い聞かせて、毎日通う。苦痛でした。







