先の見えない、予測不可能な時代になったといわれる世の中で、自分の身の回りのことくらいはある程度予測のつく状態にしておきたいと考える人が出てくるのは、ある意味では当然なのかもしれません。

 これも「わからない」よりは「わかっている」ほうが安全だという感覚につながるのかもしれません。

 しかし世の中には、やってみなければわからないことはたくさんありますし、何が面白いのか、つまらないのかはそれぞれの人の感覚によるものです。

 わからないことを排除するのではなく、わからないからこそ近づいてみる。やってみる。そんな意識の転換が必要なのではないでしょうか。

キャリア教育は
将来への不安を解消するのか

 子供の頃を思い出してみてください。自分の興味や好みの赴くままに「電車の車掌さんになりたい」「ケーキ屋さんになりたい」などと考えて、さまざまな夢を抱いていたはずです。今の子供たちなら、ユーチューバーになりたいという子もいるでしょう。

 中学校、高校と年齢を重ね、だんだんと現実が見えてくるようになると、先々の可能性がむしろ不安に変わってきて、「将来、何の職業に就くかをなるべく早く決めなければ」という気持ちになってきます。

 先がわからない恐怖に駆られて、早く確実なものを掴みたい、可能性を広げるのではなく、狭める方向に進むことで先々を予測しやすくすべきだ、という気持ちになるのです。

 そうした要望を受けてか、文部科学省もキャリア教育に力を入れるようになりました。じつに小学生の段階から将来設計をしておけ、ということです。

 しかし年次が上がるごとに、キャリア教育の実態が就労指導に近づいていく問題があり、大学などでは1年生の段階から就職活動の準備の様相を呈しているところもあります。

 今の段階では、キャリア教育はただただ、「将来、どうなるかわからない」という不安を少しでも減らすために、「自分の適性ややりたいことを自覚し、就職活動に生かす」ことが目的化されているのではないでしょうか。