競売回避でも「ブラックリスト」に登録
新規のローンやクレカ作成は困難に

――今回のようなケースで任意売却をすると、その後の生活にはどのような影響が残るでしょうか。

45歳勝ち組エリートが《年収1200万円→500万円》に…銀行から届いた「封筒の中身」に震える古田 雄哉(ふるた・ゆうや)/One Asia法律事務所 大阪オフィス パートナー弁護士。社会保険労務士。 立命館大学法科大学院修了後、兵庫県内の法律事務所、同事務所の支店長職を経て現職。交通事故や労災等の損害賠償訴訟、および中小企業の労務管理・紛争予防や国際相続を専門とする。弁護士と社労士のダブルライセンスを活かし、労働環境の整備から訴訟対応までワンストップで支援。共著に『南アジアの法律実務』『問題不動産 対応マニュアル』などがある。

古田雄哉弁護士:住宅ローンの返済が数カ月滞っている場合、この時点で、個人信用情報機関に事故情報が登録されます(ブラックリスト)。競売も迫っているようなケースでは任意売却に成功しても、今後5~7年程度は新たなローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることが困難です。

 任意売却後に残った借金(残債)については、連帯保証人にも支払い義務が及びます。事前にしっかりと話し合い、理解を得る必要があります。

債権者が応じないケースも
考えられる

――任意売却は債権者への交渉が必要と聞きます。では、交渉が決裂する可能性はあるのでしょうか。

古田雄哉弁護士:任意売却はあくまで債権者との合意に基づくものです。競売の手続きが既にある程度進んでしまっている場合や、複数の金融機関から差し押さえを受けている場合、交渉がまとまらず、そのまま競売へ移行してしまうリスクもあります。

 家を売った代金でローンを完済できればいいですが、売却後も借金が残る場合は、抵当権者である金融機関とは売却代金等について協議しながら手続きを進めていく必要があります。

 任意売却後に債務が残る場合はこれをどのように支払っていくか、あるいは「自己破産」などの債務整理を併用するか、出口戦略をセットで考える必要があります。

任意売却のデメリットがあっても
競売は回避したほうがいい

古田雄哉弁護士:競売は市場価格より低額で売却されやすく、残債が多く残る可能性があり自己破産に至る可能性が高くなります。また、物件情報が公開されるためプライバシーへの影響もあり、売却時期や明け渡しについても柔軟な調整が難しく、生活再建の見通しを立てにくい点もデメリットです。

 特に不動産を任意売却した時の想定価格と残りのローン額を見比べて、ローンを完済できるか、完済できないとしてもなんとか払っていけそうな金額まで債務を減らせる見込みであるときは、任意売却によって競売を回避することを検討すべきでしょう。

 しかし、競売の通知が届いてから任意売却に切り替えるには、時間的な猶予があまりありません。買い手を見つける、銀行と交渉する、さらに契約を完了させるためには時間が必要です。

 前田さんのケースの任意売却が成功したのは、競売の申し立てがされる前の段階で弁護士に相談したからです。

 病気や減収で支払いが苦しくなったとき、プライドが邪魔をして周囲に相談できない方は多いですが、早めに動くほど「引っ越し時期の調整」や「引っ越し費用の確保」といった交渉もできます。家族と再スタートをするためにも、早めに法律相談を受けることが大切です。

※プライバシー保護のため、登場人物に関する情報の一部を変更しています。

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