頑張って働かないほうが
合理的な制度設計
生活保護の「貧困の罠」が起きるメカニズムを、予算制約と無差別曲線を使って説明しましょう。図表8-8は、横軸に労働所得、縦軸に可処分所得(労働所得と生活保護費の合計額から諸経費を差し引いた金額)をとった図で、両者の関係がA-B-C-D-E-Fで結ばれた線(予算制約線)で表されています。
A-B-Cが生活保護を受けている時、D-E-Fが生活保護から脱した時(保護廃止時)です。
同書より転載 拡大画像表示
まず、AからBまでは勤労控除(基礎控除)が月額約1万5000円までの場合で、この金額までは生活保護費は全く減額されないので、労働所得と同じ額の可処分所得の増加となっています。BからCまでは労働所得が増えると生活保護が減額されます。ただし、勤労控除がありますので、わずかに可処分所得が増えていることがわかります。
Cを超えると生活保護から脱し、生活保護費がなくなる上、税金支払いや自立に伴って発生する諸費用が一気に発生しますので、Dまで可処分所得が減少します。これが、「年収の壁」と同じような役割を果たすので、「生活保護脱却の壁」として、稼働能力層の人々を生活保護内にとどめる役割を果たします。
ここで、無差別曲線を導入しましょう。無差別曲線はミクロ経済学(価格理論)を学ぶと最初に説明される概念ですが、消費者にとって同じ満足度(効用)が得られる2つの財の消費量の組み合わせを結んだ曲線のことです。
例えば、りんご2個とバナナ1個の組み合わせと、りんご1個とバナナ2個の組み合わせが同じぐらい満足であれば(無差別であれば)、両者を結ぶ曲線が無差別曲線になります。







