特に、性犯罪については、「嫌疑不十分」という理由で不起訴処分とされるケースが多い、という感覚があります。
不起訴の理由が「起訴猶予」であっても、「嫌疑不十分」であっても、いずれにせよ、検察官によって不起訴処分とされてしまいますと、会社が警察・検察による犯罪捜査記録を閲覧することは、法的に不可能です(刑訴法47条本文)。
その結果、上記の通り、刑事手続において社員が否認しているにもかかわらず、「近い将来有罪判決が下され、当該有罪判決が懲戒事由該当性についての何よりの証拠となるはずだ」という「目論見」のもとで懲戒処分を先行したケースにおいて、目論見が外れて不起訴処分とされてしまいますと、会社としては懲戒事由事由該当性を立証できる証拠を全く入手できない、という事態に陥りかねません。
各企業において、刑事手続において社員が容疑を否認しているにもかかわらず懲戒処分を先行させる場合には、このようなリスクがあることも十分念頭に置いたうえで、各企業としての対応を検討すべきでしょう。
身柄拘束中の欠勤を理由に
懲戒処分をすることは可能か
Q 社員が私生活上の性犯罪の嫌疑で逮捕されたのですが、接見したところ、本人は罪を否認しております。とはいえ、本人は既に有給休暇を使い切っており、身柄拘束期間中は正当な理由なく会社を欠勤することになるわけですから、そのことを理由に懲戒処分ができるのではないかと思いますが、何か問題がありますでしょうか。
A 捜査機関による身柄拘束(逮捕・勾留)が社員の責に帰すべき事由によるものであることを立証できるのであれば、「正当な理由のない欠勤」等の懲戒事由に該当するものとして懲戒処分を行うことは可能です。もっとも、不起訴処分になってしまった場合には、身柄拘束に関する「正当な理由の不存在」について立証の手段を失う可能性もありますので、慎重な対応が求められます。
一般的に、社員が私生活において犯罪行為を犯した場合を含め、いわゆる「私生活上の非行」に対する懲戒処分については、当該「私生活上の非行」により企業の社会的評価を毀損(きそん)し、または毀損するおそれを惹起したことに処分の根拠を求めることが多いと思います。







