社員が性犯罪で逮捕、本人は罪を否認…懲戒処分にしてもいい?【弁護士が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

もしも会社の社員が逮捕されてしまったら……。きっと、上司や人事はどのような対応を取ればよいのか頭を悩ませることだろう。しかし、事態をもっと悩ましくする可能性があるのが、「本人が罪を否認している」ケースだ。果たして、該当社員を懲戒処分することはできるのか?その際の注意点などはあるのか?これまで、数々の会社から人事労務の相談を受けてきた弁護士が解説していく。※本稿は、弁護士の小鍛冶広道、小山博章、宇野由隆、柏戸夏子、金澤 康『社員が逮捕されたときに読む100問100答』(労働開発研究会)の一部を抜粋・編集したものです。

社員の自白や自認がない段階で
懲戒処分を出すことはできるのか?

Q 社員が私生活上の性犯罪の嫌疑で逮捕されたのですが、接見したところ本人は罪を否認しております。とはいえ、わが国の刑事司法は高い有罪率を誇っていますので、懲戒処分してしまってもよいように思いますが、何か問題がありますか。

A 性犯罪事案については「嫌疑不十分」で不起訴処分になることも案外多く、不起訴処分となってしまうと会社としては懲戒事由該当性を立証する証拠を一切入手できない、ということになりかねませんので、慎重な判断が必要になります。

 懲戒処分の有効性が裁判所において争われた場合、企業はまず、(周知された就業規則に懲戒事由と懲戒の種類・程度に関する条項が存在することを前提に)社員が就業規則所定の懲戒事由に該当する非違行為を犯したこと(懲戒事由該当性)を主張立証しなければなりません。この主張立証ができない場合は、懲戒権の濫用かどうか(労契法15条)を問題にするまでもなく、懲戒処分は無効と判断されてしまいます。

 他方、だからといって、懲戒事由該当性の主張立証のためには、社員の「自白」「自認」が必要かといえば、そうではありません。