入れ替え戦を制して悲願のJ3昇格
試合後の胴上げは遺影と一緒に

 そして、オーナーに就いて3年目の昨シーズン。JFLを2位で終えた滋賀は、J3最下位のアスルクラロ沼津との入れ替え戦を2戦合計4-3で制してJ3参入という目標を成就させた。ホームで昨年12月7日に行われた第1戦には、歴代最多を大きく更新する9006人のファン・サポーターが駆けつけた。

「もちろんサッカークラブを運営するのは初めてでしたし、よそさんのクラブの経営もよく知りません。ただ、このチームには十数年という歴史があるので、それとの融合といいますか。ウチはウチなりに一体感を大事にして、サッカーはやはりチームプレーなので、最後は一丸となって戦おう、と。チームだけじゃなくて、ファン・サポーターの方々や行政さん、スポンサーさんを含めたすべてが一体になった結果だと思います」

 3-2で先勝した第1戦に続いて、敵地での第2戦を1-1で引き分けて歓喜の涙を流した直後。選手たちの手で胴上げされる直前だった河原オーナーは、思わぬ展開にさらに心を震わせている。

「家内の遺影をこのスタジアムに持ってきたのは僕でしたけど、試合中は別のところに置いていました。それを選手たちが持ってきてくれた上に、遺影も一緒に胴上げしてくれて。家内にこの景色を見せたいとずっと思っていたし、もう感無量というか、これで家内との約束は果たせたかな、と」

 昨シーズンはブリオベッカ浦安・市川の守護神としてJFLで滋賀と対峙し、今シーズンから滋賀の一員となったゴールキーパーの本吉勇貴は、滋賀への印象を問われると一体感と即答している。

「滋賀は選手たちやコーチングスタッフ、ファン・サポーターとチームに関わる全員が常に一丸になって戦っていましたし、対戦相手としてすごく戦いづらい印象がありました」

 熊本に勝利した歴史的な一戦でゴールマウスを守ったのは33歳の本吉。3年前の三重戦後に麗さんから激励された角田は29歳になり、在籍8年目のチーム最古参選手として最終ラインで先発フル出場した。ともに百年構想リーグで、それぞれのキャリアで初めてJリーグ公式戦の舞台に立っている。

 過去から今現在、未来へと受け継がれていくバトン。そこに初体験のサッカークラブ経営に体当たりで臨んできた河原オーナーの情熱と、夢と希望を託して旅立った麗さんへの感謝の思いが融合したなかでJ3参入を果たし、初参入クラブにとって一生に一度のホーム初陣で歴史的な勝利を手にした。

 感動の余韻が色濃く残る熊本戦後の取材エリア。天国へいい報告ができるのでは、と問われた河原オーナーは「もう報告できていますよ」と笑いながら、遺骨をしのばせた小さな袋を再び見つめた。

 47歳の同オーナーの視線はすでに滋賀県の未来へ注がれている。高校サッカーで全国優勝校を輩出した滋賀県内のサッカー熱をもっと高め、滋賀が中心になってファン・サポーターをさらに引き込み、地域の子どもたちの憧れの存在になる。麗さんとの約束を果たした先に、さらに大きな夢が広がっている。