総予測2026Photo:PIXTA

日本の賃金は長年停滞が続いたものの、ここ2年連続で高水準の賃上げが実現している。またコロナショックからの回復や働き方改革の進展もあり、人手不足が成長課題として浮上している。高賃上げは今後も続くのか。特集『総予測2026』の本稿では、2026年の雇用と賃金の先行きと課題を展望する。(法政大学教授兼日本総合研究所客員研究員 山田 久)

人手不足と実質賃金プラス化
26年の雇用・賃金の注目点

 2026年の雇用・賃金の注目点は、「常態化した人手不足の行方」と「実質賃金のプラス転化の可能性」だ。

 雇用や賃金の前提となる景気は、不透明感を抱えながらも回復傾向で推移するとみられる。

 もちろん、トランプ相互関税は当初の水準から引き下げられたとはいえ、15%関税の対米輸出へのマイナス作用は避けられない。加えて、高市早苗首相の台湾有事「存続危機事態」発言を受けて険悪化した対中関係により、訪日観光客減少や水産物輸入停止が長期化しかねないのも懸念材料だ。

 一方で、高市政権の「責任ある積極財政」の方針を受けた金融財政政策の景気下支え効果が期待できる。世界経済が不安定ながらも回復傾向を維持すれば、米国以外への輸出増も予想できる。

 こうした下で、雇用情勢は、25年には足踏み状況になった労働力不足感が再び緩やかに強まることが予想される。