私がそう言い切れるのは、定年間近のみなさんは長い間、自分の気持ちに蓋をして生きてきたので、その思考回路がスリープ中のことが多いからです。かつて好きだったことや熱量を注げるものをただ忘れているだけかもしれません。そんなときは昔の自分を振り返るのが有効です。

 あなたはなぜ、最初の会社に入社したのか覚えていますか?

 子どもの頃に熱中したこと、なりたかった職業、夢見たことは何でしたか?

中高年のエネルギーは
どうして枯渇するのか

 定年後の人生設計で満たすべき3要素はズバリ「方向・方法・エネルギー」です。

「方向」は定年後の方向性、つまり、「どういう方向へ向かうのか」を意味します。65歳まで、70歳まで、75歳まで、と5年刻みで想像するとより具体的に考えられます。「方法」はその方向に進むための具体的な方法です。「エネルギー」はそこに向かって歩むための動力源です。

 さて、突然ですがあなたの「悔しかったこと」「できなかったこと」「コンプレックスだったこと」は何ですか?

 この質問は、役員・管理職研修や異業種交流会などの冒頭でよく行われる「ネガティブ自己紹介」で用いられるものです。

「私はこんなにすごい」という話より、逆に「私はこんな失敗をしたことがある」といったネガティブな話に他者は共感することから、短時間で人と人との距離を縮めるために使われる手法です。

 50・60代にとって、もっとも厄介なのが「エネルギー」です。

 働き過ぎてエネルギーがすでに枯渇し、燃え尽き症候群になっている人も少なくありません。また、40代まで組織の命令に振り回されて思考停止に陥り、エネルギーの源である「やりたいこと」を長年封印した結果、「あれ、私のしたいことって何だっけ?」とわからなくなる人もいるでしょう。

コンプレックスこそ
最強のエネルギー

「エネルギー」と「方向」は密接に結びついていますが、定年後、特にやりたいことがないという人もいるかもしれません。やりたいことさえあれば、その動機だけで前に進むエネルギーが満たされている状態なので、なんら問題ありません。