原油高騰でもサーチャージを値上げしないJALとANAに「さすが!」とぬか喜びする人が知らない事実豪州カンタス航空は燃料費上昇を速やかに運賃に反映させた Photo by Koji Kitajima

航空業界が最も恐れるパニックポイントとは?

 航空業界が最も恐れているのは、燃料価格が運賃を上回るような制御不能な領域、パニックポイントに達することだ。運航費用において燃料費は通常2割~4割を占めるが、足元の燃料価格上昇はこの比率を劇的に押し上げている。

 燃料価格がこのまま高止まりすれば、経営体力の弱い航空会社から順に運航停止に追い込まれることは容易に予測できる。すでにアジアのLCCの一部は、燃料価格の吸収が不可能であるとして、新たなサーチャージの導入や路線の休止を検討し始めている。燃油サーチャージという調整弁ではもうまかないきれないほど、コストが増えるスピードが加速している。

 航空業界は危機を幾度も乗り越えてきたが、今回のイラン戦争が長期化すれば、過去の事例とはまた性質が異なる事態となるだろう。すなわちコロナ禍からの回復期にあり、ようやく需要が戻ってきた矢先の出来事であるため、航空各社のキャッシュフローは依然として脆弱である点だ。

 加えて、中東のハブ機能が滞ったこと、そしてウクライナ戦争によりロシア上空を迂回せざるを得ないエアラインも多数あることから、世界の航空ネットワークそのものがルートを含め再編を迫られている点だ。

 各社が実施している値上げや運休は、単なる一時的な措置ではなく、戦争が長期化するリスクに備えた生存戦略とも言い換えられる。

 利用者も、これまでの常識が通用しない可能性を覚悟しておいたほうがいいだろう。夏休みや年末年始に海外旅行すると決めている人は、早めに航空券を買うのが賢明だ。

 もし今後、ジェット燃料価格がパニックポイントを超え、さらなる供給制限が始まれば、国際線は一部の層に限られた特権的なものへと向かう懸念すらある。世界の空は、かつてない試練の時を迎えている。

原油高騰でもサーチャージを値上げしないJALとANAに「さすが!」とぬか喜びする人が知らない事実ニュージーランド航空は原油高を受けて国内線の一部欠航を決めた Photo by Koji Kitajima
原油高騰でもサーチャージを値上げしないJALとANAに「さすが!」とぬか喜びする人が知らない事実