セブン-イレブンの成功は
「消費者の立場に立つ」ゆえ

 消費の動きを先に捉え、その需要に合わせて生産を最適化することにいち早く着手していたのが、コンビニエンスストアのセブン-イレブンです。

 それを牽引したのは、セブン-イレブン・ジャパンの創業者であり、のちにセブン&アイ・ホールディングスの会長となった鈴木敏文氏(現・名誉顧問)です。

 鈴木氏は1970年代から導入していたPOSシステムを、単なる販売記録のツールではなく、「消費者の動向を読み取る仕組み」へと進化させました。そのデータをもとに、店舗ごとに「どの棚に、いつ、何を、いくつ置けば売れるか」を検証し、地域や時間帯ごとに最適な商品構成を導き出すようにしたのです。

 その結果、1990年代に入るころには、消費者の変化に合わせて商品を常に更新できる体制を見事に確立しました。

 また、需要の中心が高齢層へ移る地域では、小容量や健康志向の商品、和惣菜などを優先的に開発し、鈴木氏自身が味見までして確認するなど、細やかな対応も重ねたといいます。

 鈴木氏の「消費者の立場に立つ」姿勢は、実はセブン-イレブンを立ち上げる以前のイトーヨーカ堂時代から一貫していました。

「消費をつくる・増やす」という
発想が乏しい日本の経営者

 衣料品売場を視察した際、売場が閑散としていたので理由を尋ねると、担当者は「うちは高齢のお客様が多いので、こういう地味な服で十分です」と答えたといいます。

 それに対して、鈴木氏はこう返したそうです。

「あなたが年を取ったときに、こんな服を着たいと思うのか?」

 この一言に象徴されるように、鈴木氏は常に「作り手の論理」ではなく「買い手の気持ち」を出発点にしていました。

 だからこそ、早朝や深夜など、ニーズはあるのに供給ができていない時間帯に需要を見いだし、それまでの日本には存在しなかったコンビニエンスストアという新しい小売形態を導入することができたのです。

 鈴木氏とは対談させていただいたことがあるのですが、そのとき「1990年代に消費と生産は逆転した」とおっしゃっていました。