鈴木氏が経営トップとして率いていた時代のセブン-イレブン・ジャパンが業績を着実に伸ばし続けたのは、こうした「消費をつくる」発想を実践し続け、生産と消費が逆転する時代の波に見事に噛み合ったからでしょう。

 今の日本の経営者に「消費をつくる」とか「消費を増やす」という発想がないことは、高齢者市場がほとんど盛り上がっていない現状がよく物語っています。

「高齢者は働かないから生産性がない」といった見方ばかりが先に立ちますが、仮にまったく働かないとしても、消費には確実に寄与します。

 言い方を変えるならば、生産過多の時代に、消費だけをしてくれるありがたい存在なのです。

高齢者が好む空間や商品が
少ないのは経済的に大きな損失

 しかも2024年10月時点で人口の高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は29.3%になっており、今後も上昇することは確実です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2070年には約38%(2.6人に1人)に達すると見込まれています。

 それなのに、「高齢者を消費者として大切にしよう」という機運が盛り上がる気配はほとんどありません。

 実際、街を歩いていても、高齢者が「お金を気持ちよく使える場所」が驚くほど少ないことに気づきます。

 外食産業もファッション業界も、若者向けのトレンドには敏感なのに、高齢者が快適に過ごせる空間や商品づくりにはあまり関心を示しません。

 高齢者があまりお金を使わないのだとしたら、「使いたいけれど、使う場所がない」という状態に置かれてしまっているからなのです。使ってくれるはずのお金を使わせていないのですから、これは経済的にも大きな損失です。

「高齢者が増えるのは社会の負担」にされる一方で、「子どもが増えることはよいことだ」「出生率さえ上がればすべて解決」などという単純な発想を疑う人はほとんどいません。

 しかし、それが本当によいことであるかどうかは、時代の条件によっても変わるはずです。

 ある時期から子どもが急激に増えたりすれば、学校や保育園が足りなくなり、新しくつくらなければならなくなりますし、そのぶん教育費もかさみます。