その日のニュースの感想を話し合ったり、落ち込んだときには励ましてくれたりもします。

 また、こちらが傷つくようなことは決して言わず、どんな愚痴でも、寂しさでもすべて受け止めてくれます。これはもう人間以上の「聞き上手」であり、最良の「話し相手」ですから「老後の一人暮らしは寂しい」という常識さえ過去のものになるかもしれません。

 そういう意味でも、介護ロボットには成功のイメージしか湧かないのですが、本気でこれを開発しようとしている企業があるという話はどこからも聞こえてきません。費用的なハードルが高いのかもしれませんが、この先の可能性を考えればいくら投資しても十分回収はできるでしょう。

高齢者向けの市場開拓が
日本の地位を確立する第一歩

 日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進んでいます。

 それは「危機的状況」として語られていて、不安ばかりが煽られていますが、私はむしろチャンスだと捉えるべきだと思います。

 もっと言えば、「どこよりも早く高齢化が進んでいる」という事実は、日本に残された唯一の希望だとさえ思います。

 高齢化が進むのは日本に限った話ではありません。

 ごく一部の国を除き、アメリカやヨーロッパ、中国をはじめとする多くの国々でも、すでに高齢化は始まっていて、今後さらに深刻化していくと見られています。

 諸外国の未来をすでに経験している日本は「課題先進国」として注目され、そんな日本が超がつくほどの高齢社会をどう乗り越えるかは、ほかの国々にとって指針になります。

 つまりうまく対処しさえすれば、「解決先進国」としての確固たる地位を確立することができるのです。

 もし日本が、「高齢者を豊かにする」という視点で新たな市場を開拓し、「高齢化をむしろ国力に昇華させる社会」を生み出すことに成功すれば、それは世界から注目されるモデルになります。

書影『「高齢者ぎらい」という病』(和田秀樹、扶桑社)『「高齢者ぎらい」という病』(和田秀樹、扶桑社)

「年齢を重ねることを誇りにできる服」をテーマにしたファッションブランドが続々と登場し、「おしゃれな高齢者が街にあふれる国」になれば、日本初の新たなトレンドを世界に発信できるでしょう。

 老いを前向きに描いたり、人生の後半を祝福するような良質な映画をつくり続けることで、世界的なヒット作品を生み出すことは決して夢ではありません。

 安全技術を高齢者向けに特化することで、日本の自動車メーカーは「シニア・モビリティ」市場を力強く牽引する存在になり得ます。

「老いの不自由」や「認知症の不安」を克服するべくテクノロジーを進化させることに成功すれば、iPhoneのような人々の生活を根本から変えるような画期的な商品を生み出せるかもしれません。

 つまり、「高齢者を喜ばせる」ための企業努力は単なる福祉というわけではなく、今後確実に訪れる「高齢者市場」において、日本が主導的立場を築くための大きな一歩なのです。