ぬいぐるみへの「独り言」が
最強のメンタル管理術になる

 さらに驚くべきは、「ぬいぐるみに話しかける」行為が、高度なセルフマネジメントとして機能している点だ。

 伊庭氏は、ぬいぐるみを相手にした「自己開示」の重要性を説く。例えば、眠る前にベッドの横にあるぬいぐるみに向かって、以下のような問いかけをする。

「今日、自分は何に対してイライラしたのか?」
「本当はどうしたかったのか?」
「最近、無理をしていないか?」

 一見すると不思議な光景だが、これはもうひとりの自分に語りかけるような存在としてぬいぐるみが機能し、「自己対話」のプロセスに役立つという、心理的裏付けがある。社会的な仮面を被った偽りの自分ではなく、本音を引き出す存在として機能するのだ。日々の生活で見失いがちな感情や心の状態を、俯瞰(ふかん)して見ることができるようになる。

 伊庭氏の相談者からは、「ぬいぐるみに話しかけるようになって、感情を引きずらなくなった」「気持ちが楽になった」という声が相次いでいるという。「ぬい活」は、弱音を吐けない日本男性にとって、最も安全で安価な「心の相談窓口」と言えるだろう。

 これまで「大人の男がぬいぐるみなんて」と切り捨てられてきた文化は、いまや形を変え、メンタルヘルスを支える「現実的なライフハック」へと昇華した。

 秋葉原のドールカフェにぬいぐるみを持参する男性も、出張先のホテルで枕元にぬいぐるみを置くビジネスマンも、決して現実逃避しているわけではない。むしろ、過酷な現実を生き抜くために、自分を立て直し、慈しむためのツールとしてぬいぐるみを選んでいるのだ。

 もし、あなたが日々の仕事に疲れ、誰にも言えない不安を抱えているなら、小さなぬいぐるみを一つ、手に取ってみてはどうだろうか。その柔らかい手触りは、想像以上にあなたを励ます「盾」となり、戦い続ける活力を与えてくれるはずだ。

<取材先>
店名:ドールフレンドリーコンセプト紅茶店Marionnette Amis
住所:東京都千代田区岩本町2丁目5-15
概要:「ドール」「ぬいぐるみ」などの「小さなお連れ様」が主人公の紅茶店。2階には撮影が楽しめる、フォトスタジオMarionnetteZONEがある。
<識者プロフィール>
名前:伊庭和高氏
肩書:株式会社マイルートプラス代表取締役、心理コミュニケーションアドバイザー、ぬいぐるみ心理学開発者
略歴:1989年生まれ。ぬい活歴=年齢。2人兄弟の長男として生まれ、幼いころから50体以上のぬいぐるみに囲まれて育つ。早稲田大学大学院在学中に人間関係の悩みを根本から解決する有効な手法として、ぬいぐるみ心理学®を独自に開発。2017年に株式会社マイルートプラスを設立し、7,000名以上のお客様をサポート。悩みに寄り添い、背中を押している。ブログ「ぬいぐるみ心理学」は月間13万人が訪れ、YouTubeやメールマガジンと併せ多くの方がぬいぐるみ心理学を学び実践している。メディア出演や企業での講演会を精力的に行うなど、活動の幅を広げている。著書に『ストレスフリー人間関係』(セルバ出版)、『「声に出す」だけでモヤモヤがすっきりする本』(三笠書房)、『大人だって、ぬいぐるみに癒されたい!』(PHP研究所)がある。
心理コミュニケーションアドバイザーの伊庭和高氏心理コミュニケーションアドバイザーの伊庭和高氏