「治療」前のぬいぐるみ「治療」前のぬいぐるみ 画像提供:ぬいぐるみ病院

幼い頃から共に過ごしたぬいぐるみは、持ち主にとって唯一無二の存在。しかし、長年一緒に暮らしていると、綿がヘタってしまったり、生地が破れてしまったりと不具合も生じてくる。そうしたぬいぐるみの“ケガ”を治療する専門病院が大阪にある。約10年前に開院し、現在は入院まで数年待ちの状況が続く「ぬいぐるみ病院」のユニークなサービスとは。(清談社 真島加代)

30年連れ添った
猫のぬいぐるみ「みー」

 都内で働く峰田美香さん(仮名・35歳)の家に住む猫のぬいぐるみ「みー」は、峰田さんが幼い頃から生活を共にしてきた大切な存在だ。

「みーさんとは30年以上一緒に暮らしています。就職を機に上京する際も、実家から連れてきました。基本的に飾っているだけですが、みーさんが部屋にいると安心するんですよね」

写真:ぬいぐるみ みーさん、ぴー「リボンをつけておしゃれをしているのが、みーさんです。隣にいるのは後輩ぬいぐるみの『ぴー』。私は今もぬいぐるみが大好きで、みーさんの後輩ぬいぐるみはどんどん増えていますね」(峰田さん)

 ぬいぐるみは幼い頃に卒業するもの、というイメージを持っている人も多いかもしれない。しかし、峰田さんのようにぬいぐるみが“家族の一員”になっているケースは珍しくない。

「ただ、長年一緒にいると綿がしぼんできたり、専用の洗剤で洗っても汚れが落ちなかったりするので、セルフケアの限界を感じています。汚れているからといって愛着が薄れるわけではありませんが、心なしかみーさんも元気がないように感じます。なんとかしたいですね…」

 経年劣化によって傷んでしまったぬいぐるみのケアは、専門的な知識と技術を要する。そのため、自らの手で行うのが難しい、と峰田さんは肩を落とす。