「努力」という名の逃避行動

では、「努力する」ことはレベルの高い防衛機制だから良いことではないか、と思われるかもしれません。確かにその通りなのですが、中にはそうではない「努力」も存在します。それは、「自分は努力しているのだ」という言い訳を盾にして、そこに逃げ込んでいるケースです。

例えば、私が以前、開業医としてクリニックを経営していた時のことをお話しします。開業医には、スタッフを雇い、円滑に病院を回していくためのマネジメントスキルや、診療報酬のルールを勉強して利益が出るシステムを作る経営スキルが求められます。しかし、私はそうしたことが非常に苦手でした。

もし私が「経営や管理は苦手だから」と、部屋に引きこもってひたすら医学知識の勉強ばかりをしていたらどうでしょうか。医学の勉強自体は苦ではないため、「開業医として良い医療を届けるために頑張っている」というつもりになれます。

しかし実際には、自分がやりやすいこと(医学の勉強)だけに向き合い、本当にやらなければならない苦手な課題(経営やスタッフとのコミュニケーション)から目を背けている「現実逃避」に過ぎないのです。

間違った努力に気づき、軌道修正をする

人間は、「頑張らなければいけない」という葛藤がある時、本質的な課題から目を背けるために、「実はそれをやってもあまりプラスにならないこと」に逃げ込んでしまう傾向があります。

婚活などでも同じです。相手とのコミュニケーション能力を磨いたり、自分の見たくない部分に向き合ったりする必要があるのに、ひたすら「自分磨き」という名のやりやすい努力ばかりに走ってしまう人がいます。本質的な課題に向き合うのは傷つくことも多く、辛いからです。

一生懸命やっているのにうまくいかない時は、ひたすら同じ努力を続けるのではなく、「今やっていることと、本当に欲しい結果の間にズレがないか」を問いかけてみてください。「私はこれだけ努力しているから大丈夫」と思いたいがための、間違った努力になっていないでしょうか。

努力の方向がズレているだけかも

自分一人で気づくのは難しいので、時には立ち止まって全体を見直したり、他の人に意見を聞いたりして、柔軟に考えてみることが大切です。そうしないと、「こんなに頑張っているのに結果が出ない自分はダメだ」と自己肯定感まで下がってしまいます。

原因はあなたがダメなのではなく、ただ努力の方向がズレているだけです。そこに気づくことができれば、最初はしんどくても、きっとうまくいくようになります。視野を広く持ち、柔軟に物事に取り組んでみてください。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。