備蓄254日分に加え中東以外からの輸入がある
米国は11月中間選挙までには収束図る!?

 ホルムズ海峡を出たタンカーが日本に着くまでには、20日間程度かかる。

 ホルムズ海峡が実質的に閉鎖されたのは3月2日頃だったから、この直前にホルムズ海峡を通過したタンカーが日本に到着するのは、3月22日頃と見込まれる(図表1参照)。

 それ以降、ホルムズから日本への原油輸送は、ホルムズ海峡閉鎖問題が解決されるまで中断することになる。日本の原油輸入量は激減するが、冷静に考える必要がある。なぜなら、備蓄が存在するからだ。

 備蓄量は、国家備蓄が約146日分、民間備蓄が約101日分、産油国共同備蓄が約7日分、合計でほぼ254日(約8カ月)分ある。

 政府は3月16日から備蓄原油の放出を始めたが、それに加え、アメリカや西アフリカ、東南アジアなど、中東以外からの輸入がある。だから備蓄は254日以上もつ。

 より詳しく見れば次の通りだ。

 日本の1日の原油消費量をaとし、x日間、中東からの輸入が中断し、備蓄と中東以外からの輸入で賄うとする。

 この期間の原油の消費量はaxだ。他方、供給量は、備蓄が約254aだけあり、この他に、中東以外からの輸入がある。その量は1日あたり約0.1axだ。

 したがって、需給が均衡するには、次式が成立する必要がある。

 ax=254a+0.1ax

 これを解くと、x=282となる。これは約9カ月間だ。

 したがって、中東からの原油輸入が3月末から途絶する場合には、12月の下旬頃まで、備蓄と中東以外からの輸入で、需要を賄うことになる。

 したがって、12月上旬頃までにホルムズ閉鎖が解除され、日本向けのタンカーがホルムズ海峡を出発できれば、問題はないということになる(図表1参照)。

 イスラエルとアメリカによるイラン攻撃がいつまで続くかは、もちろん正確には予想できない。12月上旬頃までに終了しない可能性はゼロではない。

 しかし、11月にはアメリカの中間選挙がある。そして紛争が終結しなければ、アメリカのガソリン価格は高騰し、人々の不満が募る。だから、12月まで紛争を続ける可能性は極めて低いと考えてよいのではないだろうか?

 70年代オイルショックでは、主導権はアラブ諸国にあり、将来の見通しがつかなかった。いまの状況は、それとは基本的に異なる。

問題は備蓄が限られる天然ガス
対応迫られるエネルギーコストの上昇

 ただし見落としてはならないのは、LNG(天然ガス)だ。実は、日本のエネルギー安全保障の最大の弱点は、石油よりむしろ天然ガスにあると考えることができる。

 LNGは、天然ガスをマイナス162℃に冷却して液化したものなので、タンクに貯蔵しても、わずかな熱侵入により気体に戻ってしまう。このため長期保存に適していない。LNGの低温状態を維持するためには、断熱性の高い地下の高性能タンクが必要だ。この建設には莫大な費用がかかる。

 このため、LNGの備蓄は主に電力会社が発電用として持っている分に限られ、10~20日分程度にすぎない。したがって、供給障害に対する耐久力は、原油よりはるかに弱い。

 その半面、日本が輸入する天然ガスの主要産出地は、オーストラリアやアメリカ、東南アジアなどなので、中東への依存は限定的だ。

 だが、それで安心できるわけではない。世界のLNG市場は相互につながっており、ホルムズ海峡を通るカタール産LNGに支障が生じれば、世界全体で需給が逼迫(ひっぱく)し、日本の調達価格にも波及する可能性が高いからだ。

 しかも、日本のガス輸入契約の一部は原油価格に連動している。したがって原油価格の上昇は、燃料費全体の上昇を通じて、日本の電力料金や都市ガス料金に広く影響を及ぼしうる。

 いずれにせよ、中東危機がエネルギーコスト全体を押し上げる構造に変わりはない。つまり、原油とガスの双方から家計と企業を圧迫する可能性がある。