例えば、テーブルに積まれた皿のカウント業務です。従業員は顧客が食べ終えた皿を一枚ずつ数え、合計金額を算出します。数え間違いはクレームや信頼低下につながるため、正確性が求められ、神経を使う作業でもあります。

 そこでスシローは、画像認識技術を導入し、皿の自動計数から精算までのプロセスをデジタル化しました。これにより人的ミスを抑制すると同時に、従業員が、調理や接客といった「人が担うことで価値が高まる業務」に集中できるようになりました。

 勤怠管理の業務も同様の工夫がされています。

 アルバイト・パート比率の高い外食現場では、勤怠の正確性は従業員との信頼関係に直結します。スシローは、入退室を顔認証で管理し、打刻データと出退勤記録を自動で突合する体制を整えています。

 勤怠や給与といった労務管理の領域は一見地味ですが、「働いた分が正確に反映される」「安心して働ける職場」という実感を生み出します。

 SPCの理論でいえば、これは「社内サービスの質」の向上です。社内サービスが高まれば、従業員満足が向上し、それがサービスの質を高め、顧客満足と収益に連鎖する。この構造を、スシローはテクノロジーで地道に高めているのです。

 実際、親会社であるFOOD & LIFE COMPANIESが公表する正社員離職率は11.4%台(2025年9月期、アルバイト・パート含まず)と、外食産業平均の20%超と比べると低水準です。

 加えて重要なのは、この発想が海外でも展開されている点です。

 DXの導入水準にはバラつきがありますが、スシローはグローバル全体でオペレーションの標準化とデジタル活用を進めています。商習慣や労働環境が異なる海外市場では、属人的運用に依存しない仕組みの価値はより一層高まります。

 従業員が安心して働ける環境があれば、サービスの質が安定し、顧客は来店するたびに同じ満足感を得られるようになります。この「満足の連鎖」を再現できる仕組みこそ、スシローのDXの本質だといえるでしょう。