筆者が語る失敗談
無理して投資資金を捻出した末路とは

 話は変わりますが、私の「戦略的失敗」を共有させてください。最近は、投資に資金を回しすぎて生活が苦しくなる「NISA貧乏」という言葉を目にする機会が増えました。実は私自身も、制度こそ違いますが、これと似た失敗を過去に経験しています。

 私がまだ30歳だった頃のこと。子どもが3歳と小さかったため、私は「時短勤務かつ派遣社員」という働き方をしていました。そんな当時の私は、「これからは投資の時代だ!」と意気込み、個別株を購入し、さらに毎月6万円の投資信託を始めました。当時の家計にとっては明らかに背伸びをしすぎた金額でした。

 少しでも多くの投資資金を捻出するため、日々のランチ代を極限まで下げるなど、節約という節約を重ねました。例えば、ランチは家で握ってきた塩おにぎりと簡単なスープのみ、それも毎日同じメニュー。

「節約して、少しでも多くのお金を投資に回さないと……」と日々のQOL(生活の質)を犠牲にしてまで、投資の「入金力」を高めることに執着していたのです。仕事の合間のお昼休みといえば、子育て中の私にとって、ゆっくりご飯を食べられる大切な息抜き時間。その楽しみを自分で奪っていたとも言えます。

 そして、資産形成もまだまだ道半ば……というタイミングで直撃したのが、リーマン・ショックでした。節約して積み立てていた投資信託の評価額は、あっという間に大暴落。資産は大きく下落し、不安に耐えきれず積立を停止。その後は回復を待つだけという判断をしてしまいました。

 これは積立投資において「最もやってはいけない愚行」です。相場が暴落している時こそ、安く多く買える最大のチャンスなのに、その恩恵を自ら放棄してしまったのですから。

 なぜこのような失敗が起きたのか。理由は明確です。自分の家計の余力や、下落に耐えられる精神的な許容度を無視し、「数字上の正解」だけを追い求めていたからです。

 投資は将来のためのものですが、その過程で「今の生活」を犠牲にしすぎれば、継続することはできません。ランチすら楽しめず、いつも頭の中は節約のことばかり。いわば、過去の私は「NISA貧乏」と同じ状態に陥っていたとも言えます。

 どれだけ合理的に見える戦略でも、暴落時のリスク許容度を理解していなかったり、自分の資金力や価値観に合っていかったりすると続けることは難しいでしょう。

「数字上の正解」が、必ずしも持続可能な正解というわけではないのです 。