筋肉が肥大したり、ミトコンドリアが増えたりといった体質を変える効果です。このような適応が起こった状態で運動を行うと、運動習慣のなかった頃と比べて、いくつかの善玉マイオカインの分泌量を増やすことができるのです。

 例えば、運動習慣のない健康な人を対象に行った研究では、60分サイクリングをしてもらうと血液中のSPARC濃度は運動前と比べて約20%増えます。その後、週3回、4週間サイクリングを行って適応を促します。そして、再度60分サイクリングを行うと、SPARCの増加は80%も高まりました。つまり、肥大した筋肉や、代謝機能が高くなった筋肉は、より多くの善玉マイオカインを分泌することができるのです。

 マイオカインの分泌は食事によっても影響を受けます。

 食品に含まれる成分の中には、筋肉の働きを良くするものがたくさんあります。タンパク質やアミノ酸は筋肉を作る材料となります。フィトケミカルといわれるポリフェノールやカロテノイドのような成分は血糖の取り込みやミトコンドリアの働きを高めるのに役立ちます。筋肉の量や質が高まると、運動による善玉マイオカインの分泌を高めることが期待できます。

 一方、大豆に含まれるイソフラボンや、ターメリックに含まれるクルクミン等は、マイオスタチンのような筋肉を細らせる悪玉マイオカインを減少させることもわかっています。

腸内環境を整えると
脂肪燃焼能力が高まる

 腸内細菌もマイオカインの分泌に影響します。腸内細菌からは短鎖脂肪酸やアミノ酸、ビタミンなどの筋肉の働きを良くする物質が作られ、マイオカインの出やすい状態を整えてくれるのです。

 また、腸内細菌は腸のバリアを保持することにも役立ちます。バリア機能が壊れると、有害物質が血液に侵入して、筋肉の働きを弱めますが、善玉菌が増え、悪玉菌が減ると、腸のバリアが強固になり、筋肉のマイオカイン分泌能が弱るのを防いでくれます。

 私たちは、運動を習慣化させたマウスの腸内細菌を別のマウスに移植すると、そのマウスの筋肉では糖や脂肪を燃焼する能力、さらには善玉マイオカインを作る能力が高まることを発見しました。となると、腸内環境を整える食べ物も、筋肉の働きを高め、マイオカイン分泌を促すことが期待されます。