「今どこにいるんだって?いやあ、ちんけな店にいるんだよ。いつ潰れるか分かんねえような店なんだ。いたくないけど、しょうがねえからいるんだよ」

 私はそれを聞いて、すぐに彼を呼びました。「君、いま『ちんけな店』って言ったな。すぐ帰ってくれ」と。けんかになるかなと思ったけれど、もうけんかになってもいいと思って、それで、その場で辞めてもらいました。

「どうせ無理」ネガティブ発言は
真面目に頑張る社員にも伝染する

 料理がうまくたってダメなものはダメです。

 会社の夢や目標に向かってみんなで頑張ろうとしているときに、「どうせ無理だ」とか「そんなに一生懸命働いたって、みんな社長のカネになるだけだから」とか、そういう後ろ向きなことを言う。それも一生懸命に言って、周りの士気を下げる。

 たとえ役職に就いていない一般社員だったとしても、こういうタイプの人を放っておくと、そのマイナスな空気がどんどん周りに伝染していく。真面目に頑張っている社員まで、「そう言われると、そうかもな……」と悪い方向に誘導されてしまうのです。

 当時は創業してまだ店舗が3店舗くらいの頃で、本当に人手不足で困っていました。その人が辞めたら店が回らなくなって、明日にも潰れてしまうかもしれない、という状況でした。

 それでも、「こんな人を残しておいたら、この会社は終わりだ」と思ったのです。店が潰れることよりも、組織が内側から腐っていくことのほうが、私はよっぽど怖かったのです。

 面接という短い時間で、その人の本質を見抜くのは難しいことですが、一緒に働いていればわかります。そうした人がわが物顔で振る舞うようになれば、会社は潰れてしまいます。今振り返ってみても、辞めてもらってよかったと思います。

 人材確保の難しい状況にあって採用の門戸を広げれば、それだけ問題も増えます。問題が起これば人間不信にもなるものです。しかし、私は裏切られることがあっても決して諦めず、人材の採用や育成、働きやすい環境づくりに力を注いできました。だから人材が確保できないという理由でお店を閉めたことは一度もありません。