「カイゼンとは日常の中の
小さな疑問・違和感から始まる」

 そうしたものの見方・感じ方・考え方を持っていたからこそ、小さな場面を見過ごさず、咎めることなく、その瞬間に賞賛することができたのです。

 全ての原点は、ここにあります。

 自社らしさとは、そのような、その会社特有の「ものの見方・感じ方」であり、社員の共通性のある「判断・行為」のパターンです。それが積み重なって、その会社らしい「マネジメントスタイル」「制度」「理念」が生まれ、「企業風土」が形成され、やがて競争優位性(強み)に繋がっていくのです。

 ここで、もう1点忘れてはいけないことがあります。この方はプログラムに参加するまでこのエピソードをすっかり忘れていたのです。どれほど重要な経験も、意識的に振り返り続けなければ色あせていく。「価値あるものは、再実感され続けなければ枯れていく」、このことを肝に銘じておく必要があります。

自社らしさを再発見する
ための2つの「場面」

 では改めて、どのように自社らしさを再発見・再実感すればいいでしょうか?鍵となるのは、2つの「場面」に着目することです。

 1つ目は、自社特有の日常場面です。働く人の誇りや原動力につながるような場面、喜怒哀楽を伴って語られる場面、その会社独特の言い回しが宿る場面――そうした日常の断片に、自社らしさは宿っています。

 例えば、リクルートでは「あなたはどうしたいの?」とマネジャーがメンバーに問いかけるという場面が広く知られています。この問いを通して、社員が自律的に考える企業文化が育まれてきましたが、その根本には「社員1人ひとりに“こうしたい”という思い・考えが必ずある」という人の可能性への信頼があるのです。