「イランの核兵器開発を絶対に認めない」「ホルムズ海峡の安全確保が最重要」「エネルギー市場を落ち着かせる具体的提案を持ってきた」といった発言は、一語一語が非常に強い影響力を持ちます。

 高市首相は英語で自ら話してアピールすることも、できたでしょう。しかし、それは正確さを犠牲にするリスクを生みます。つまり、「見せ方」より「内容の精度」を選んだのです。

 ここで2025年2月のトランプ大統領・バンス副大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談と比較してみると、この選択の意味がより鮮明になります。

 ゼレンスキー氏は、英語で世界に直接訴えかけることを核心に置きました。感情的でストレートな訴えは、響く人には響いたと思います。しかし、トランプ氏やバンス氏に対しては、むしろ「売り言葉に買い言葉」で、言い争いになってしまいました。非ネイティブスピーカーが通訳なしで挑んだことが、逆効果となってしまったのです。◆参照記事『そりゃトランプもブチギレるわ…通訳なしでしくじった「ゼレンスキー英会話」の不適切表現3選

 一方で、高市首相は憲法上の制約の中でできることと、できないことを精密に伝え、具体的な成果を引き出すことに重きを置きました。目標が異なれば、最適な手段も異なります。英語を直接使うかどうかは、その目標から逆算して初めて判断できることなのです。

トランプ英語が「シンプル」な理由
ただし強さと弱さは表裏一体

 連載の前回記事で重点解説しましたが、今回の日米首脳会談の様子からも、トランプ氏の英語は驚くほどシンプルだということがよく分かります。例えば下記の発言。

We've obliterated the Navy. We've obliterated there just about everything there is to obliterate.

《海軍を壊滅させた。壊滅させられるものはほぼすべて壊滅させた。》

 同じ単語obliterated(壊滅させた)を一文の中で3回も繰り返しています。

 さらにこの後、Their Navy's gone.《彼らの海軍は去った》Their Air Force is gone.《彼らの空軍は消滅した》などと、主語と動詞だけの短文が続きます。Incredible《信じられない》や、tremendous《途方もない》という言葉も何度も登場します。