トランプ氏に対して「語彙が乏しい」と批判するのは簡単です。が、それは一面的な見方です。
トランプ話法には2つの効果が同時に働いています。まず、同じ強い言葉を繰り返すことで聴衆の脳に「メッセージの釘」を打ち込みます。世界中のメディアが、トランプの選んだobliteratedという言葉をそのまま見出しに使わざるを得なくなります。
次に、短く断定的な文は「反論の余地がない既成事実」として受け取られやすい。複雑な説明がないぶん、聴衆が疑問を挟む隙間が生まれないのです。
ただし、このスタイルには限界もあります。「なぜ同盟国に事前通告しなかったのか」という記者の質問に対して、トランプはパールハーバーの比喩で返しました。これは一部の人の笑いを取ることには成功しましたが、複雑な問題に対する答えにはなっていません。シンプルな言語は大衆には届きますが、精密な外交上の論点を扱うには限界があります。
つまり、トランプ英語の強さと弱さは表裏一体です。この強みと弱みは、ビジネスシーンにも応用できます。
プレゼンや交渉では「相手に持ち帰らせたい一言」を決めて、繰り返すトランプ流が有効な場面があります。一方、複雑な利害関係を調整する交渉では、高市首相のように「精度」を優先する言語戦略が必要になります。どちらが正しいとかではなく、場面に応じて使い分けることが、本当のグローバルコミュニケーション力です。
今回の会談を俯瞰すると、トランプ氏は「シンプルな言葉で世論を動かす」という強みを持ち、同盟国との精密な調整という複雑な課題にも同じ手法で臨みました。一方で、高市首相は「精密な言語コントロール」という戦略で、トランプ氏から日本の国益を守ったと言えるでしょう。








