「算数脳」の子どもが陥りやすい落とし穴

山口:思考力の基本は語彙力だったり、言語化力だったり、いわゆる国語が関係していると思うのですが、たまに算数はすごく得意だけど国語ができない子とかいますよね。

安浪:います、います。

山口:そういう子も、なんとなく中学受験には強そうなイメージがあるんですけど、やっぱり国語が苦手だと影響が出てくるのでしょうか?

安浪:中学受験は突破できると思います。でも、高校受験、大学受験はかなり難しいと思います。

山口:へ~、そういうもんですか。

安浪:はい。いわゆるね、算数脳の子って、「算数」で解くんですよ。

山口:算数で解く?

安浪:センスと言えばセンスなんですけど。たとえば、算数オリンピックで金メダルを取るような子の中には、式を書かない子がいるんですね。だから一部の親御さんや先生、子どもたちは「書かずにできる子いるじゃん」って言うんです。でも、百歩譲って、そういう算数脳の子は、中学受験で最難関には合格するかもしれないけど、そのままだと必ず壁にぶち当たります。灘の特訓授業を担当していた先生がとても印象的なことをおっしゃっていました。その先生はどんなに算数ができる子、式を書かなくてもセンスで解ける子に対しても、必ず「式を書きなさい」と指導している、と。その先生に「なぜですか?」と聞いたんです。

山口:はい。

安浪:すると「数学ができなくなるから」と。算数はやっぱりどこか感覚的に解ける部分があるんですけど、数学は全部、論理の学問ですから。式を書いて頭の中にあるものをアウトプットする習慣がないと、思考をうまく整理できないので後々厳しくなります。実際、算数が大得意で開成に合格したけれど、数学で一気に失速する例もあります。

中学受験で必要なのは「テクニックと、それを支える体力」

山口:子どもたちのリアルなお話をうかがっていると、やっぱりアウトプットして思考力をつけるというのは、本当に大事になってきますね。

安浪:はい。だから、山口先生が出版された『こども言語化大全』のように、ゲーム感覚で遊びながら言葉を引き出すアプローチは本当に素晴らしいと思いました。そもそも、中学受験って、早咲きを争う競技みたいなものなんです。遊びたいのを我慢して勉強に取り組める子は、精神的な成熟度が高い、つまり成長が早いんです。でも、多くの小学生はまだ幼くて、自制して勉強に取り組める子は少ない。そういう意味でも遊びモードで言語化力を磨けるのはいいですよね。

山口:ありがとうございます。ただ、『こども言語化大全』の例文にも「うんち」がたくさん出てくるように、ゲームの内容がちょっと子どもっぽいので、成熟度が高いお子さんには向かないかもしれませんが(笑)

安浪:いやいや、皆さん中学受験生で開成とか桜蔭に通る子って、すごい子だと思ってるでしょ。でも、やっぱりみんな子どもですよ、子ども。だからめっちゃ喜んでやりますよ! 偏差値関係ないです、これ本当に。

山口:そうですか。じゃあ、この本は中学受験生にも役立ちますね。

安浪:はい。

山口:お墨付きをいただいたということで(笑)。安浪先生も、アウトプットという観点でいうと『中学受験 必勝ノート術』を上梓されてますよね。

安浪:そうですね。この本は、成績が伸びるノートの書き方を伝える本なので、「偏差値を上げたい」というご家庭にわかりやすく馴染む感じですね。でも、山口先生の『こども言語化大全』は、偏差値は関係ないですよね?

山口:そうですね。ゲーム感覚で色々な言葉に触れて、語彙を増やして、伝える力を磨いていこうというのがコンセプトです。

安浪:とはいえ、アプローチは違っても、どちらも本質は同じだと思います。だから、『こども言語化大全』で基礎体力を作って、『中学受験 必勝ノート術』で技術を磨く。パラレルでお子さんの能力を高めていっていただければと思います。

*本記事は、「中学受験必勝ノート術」著者・安浪京子氏と「こども言語化大全」著者・山口拓朗氏の対談から構成したものです。