注意点としては、導入部で展開する知識やネタは、すべて伏線として本論につながっている必要があるということ。聞き手の注意を引こうとして、本筋とはまったく関係のない話題で盛り上げようとする人がいますが、ビジネスシーンではかえって逆効果になり得ます。聞き手は話のつながりを見失い、「結局なんの話だっけ?」「なにを聞かされてるんだろう」と感じてしまうからです。

 あくまでそのプレゼンで伝えたいテーマを土台にして、導入部分は設計してください。

 先の例でいうと、Web3.0や世界のデータ量増加の話はすべて、「個の時代においてDXはなんのために行うのか」「DXにおけるマネージャーやリーダーの役割は?」という根幹の問いにつながっているのです。

プレゼンの途中で聞き手の
思考が止まるのはなぜか

 次に、ストーリー全体を設計していきます。

 人のプレゼンを聞くうちに、「この話はどこにつながるの?」と思った経験があるはず。これは往々にして、情報と情報の間のロジカルなつながりが乏しく、ただ話を羅列している際に起こります。文脈を踏まえずに唐突にある話題が出てくると、聞き手はその必然性や意味をうまく飲み込めず、思考が停止してしまう。

 聞いているうちに内容を理解できなくなるプレゼンは、各説明をつなぐロジックが破綻しているのです。

 これは印象に残らないプレゼンの典型的な失敗例で、企業の業績説明会などでもよく見られるパターンです。

『The Giver 人を動かす方程式』書影The Giver 人を動かす方程式』(澤円、文藝春秋)

 例えば、登壇した経営層が、今期の業績推移や顧客ニーズの動向、それに対する施策などを長々と説明したところで、唐突に、「当社は『グリーン対策』の一環で社内に観葉植物を置くプロジェクトを進めており……」とやってしまうのです。すると、聞き手は、話のつながりを見失い、「今期の業績との関係はなんだっけ?」「顧客ニーズの話はどこへ行った?」と、ただ混乱してしまいます。

 こうした幕の内弁当のようなプレゼンになる背景には、各部門から上がってきた説明を「それぞれの顔を立てて」披露する使命が話し手に課せられている事情もあるのでしょう。

 無論、客観的な情報を伝えるパートは必要不可欠なものですが、話し手自身が「全体としてなにを伝えたいのか」を整理し、ひとつのストーリーとして統合する意識が必要です。

 各情報は「どの流れではじまり、どこにつながり、どんな意味をもつのか」有機的につながってこそ、聴衆の内容への理解も深まり納得感が生まれるのです。