兼原信克
「台湾もウイグルもチベットも中国の国内問題」一見弱腰な日本政府答弁にひそむ非・傍観戦略
台湾やウイグル、チベットなど中国の周辺は摩擦が絶えない。そうした場面におよぶと、日本政府は「基本的には国内問題」と答弁する。しかし、この表現は単なる中国への配慮ではなく、安全保障を考えた外交上の工夫でもあった。冷戦下から続く中国との複雑な関係を、対中外交を担ってきた実務家の2人が解説する。※本稿は、笹川平和財団常務理事の兼原信克、立命館大学教授の垂 秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

「中国が共産化したのは日本のおかげ」毛沢東の発言が示す習近平体制の原点
2025年7月7日の「抗日戦争勝利80周年」に際し、習近平は中国共産党の功績を改めて強調した。しかし、事実を追っていくと、中国で語られる歴史認識と異なる面が見えてくる。毛沢東が「日本に感謝する」と語った意味とは何か。中共がひた隠す不都合な真実を、対中外交を担ってきた実務家の2人が語る。※本稿は、笹川平和財団常務理事の兼原信克、立命館大学教授の垂 秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

「農村から都市を包囲せよ」地方を握る習近平の“毛沢東式”支配戦略
2期10年の任期制限を撤廃し、中国共産党のトップに君臨し続ける習近平。その権力基盤を支えているのは、地方で広める反日プロパガンダだという。習近平が農村部から熱烈な支持を集める理由を、対中外交を担ってきた実務家の2人が解き明かす。※本稿は、笹川平和財団常務理事の兼原信克、立命館大学教授の垂 秀夫『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

日米韓で安全保障協力の強化が合意された背景には「膨張中国」への危機感とともに日韓関係の改善があった。合意の実効も台湾有事の際の韓国の対応や3国では最も関係が弱い日韓の連携が進むかが重要だ。

米中対立激化で“新冷戦”といわれる中、日本は高性能の半導体製造装置23品目を輸出管理の対象に追加するが、貿易政策だけでなく、先端工場建設助成や防衛産業再編など安全保障を目的にした産業政策が必要だ。

ウクライナ侵攻を見ても、長期独裁化する習近平中国国家主席が米国の意図を読み違える「判断間違い」から台湾有事が起こり得る。反撃能力保有や防衛費増強は日本の安全保障を確保する必然の課題だ。

「台湾有事」となれば「日本有事」になる可能性が高く、「GDP比1%」に象徴される防衛政策は非現実的だ。防衛費増額議論では財源についても増税などの現実的な手段を検討する必要がある。

参院選に勝利した岸田政権の安全保障政策の最重要課題は「反撃能力」の充実だ。ウクライナ侵攻を見ても非現実的な専守防衛論を脱却し中距離ミサイル整備など敵の攻撃への抑止力強化は喫緊の課題だ。

ウクライナ侵略は日本にとっても他人事ではないが、「台湾有事」などを想定すれば日本が決定的に弱いのはサイバーセキュリティの体制だ。専門の危機管理監を置き人材や資金を投入した統合体制の整備が急務だ。

クリミア併合以来、ウクライナの人心はロシアを離れロシアは武力で恫喝するしかウクライナを抑える方法はない。一方でウクライナはNATOの防衛圏ではなく、ロシアが軍事力頼みを止められないことがウクライナ危機の深刻なところだ。

岸田政権は経済安全保障を主要政策課題に掲げる初めての政権だが、対中技術流出防止や半導体や希少資源などのサプライチェーンの確保などに世界が本気で取り組むなかで、日本の課題は多い。

アフガニスタン戦争は米軍の撤収という形で終わった。本来はテロの首謀者とされるビンラディン殺害の時点で終わったはずだが、「民主アフガン建設」という米国の“理想”の押しつけが戦争を長期化させた。

G7サミットでは中国を意識して民主主義国家の結束が確認されたが、今後の連携の主舞台はインド太平洋地域だ。経済や安全保障の世界の戦略的地域になり、日本外交の中心軸になる。

日米首脳会談で台湾有事を想定した連携強化が確認されたが、中国の膨張の根底には歴史に根差したナショナリズムがある。軍事的な対応とともにナショナリズムの暴発を抑えることが重要だ。
