だから、国交正常化の際の日中共同声明では「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」となっている。この理屈で、中国側を最終的に納得させました。

 これは簡単に言うと、「日本はもうサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄したので、台湾が今誰のものか判断する立場にはありません。でも、北京がそういうことを言っているのは、ポツダム宣言やカイロ宣言の経緯から理解し、尊重しています」というロジックです。ただの経緯論で、中国とは同床異夢ですね。

 また、日本の国会では社会党が完全に中国側に立っているので、「台湾は中国のものだと言え」「台湾問題は中国の国内問題だと言え」とがんがんに攻められる。そうなると日本もアメリカも台湾有事に介入できなくなる。

アメリカは沖縄の米軍基地を
使って台湾を守る

 そこで、この問題に関する日中国交正常化後の政府統一見解は、「中華人民共和国と台湾との間の対立の問題は、基本的には中国の国内問題であると考えます。わが国としてはこの問題が当事者間で平和的に解決されることを希望するものであり、かつこの問題が武力紛争に発展する可能性はないと考えております」(日中国交回復当時の大平正芳外相の国会答弁)というものになりました。

 大平外相の使った「基本的には」という表現は栗山さんの入れ知恵ですが、台湾海峡問題が平和的に解決される限り、という意味であり、武力行使が行われればその時はもはや国内問題ではない、と栗山論文には明確に記されています。日中共同声明は、若き栗山次官が日本外交に遺した最高傑作だと思います。

垂秀夫:現在の国会答弁は、チベット問題やウイグル(新疆)問題にしても、日本政府は同様の立場を踏襲していますね。たとえば「チベットは内政問題か」と問われたら、日本政府は「基本的には内政問題です」と答えるのです。

 この「基本的には」という言葉には、深刻な人権侵害があれば日本も関与しうる、という余地を残すロジックが込められていました。ところが、その意図が次第に忘れられ、今ではむしろ保守派から「なぜ内政問題なのか!」と反発を招くこともあります。