経営学の知識を軸に、より良いリーダーシップを振るえるようになることを目指す『リーダーシップの科学』。良いリーダーを目指して試行錯誤するリーダーに、新たな視点を提示する1冊だ。本稿では、本書の発売を記念して、著者である鈴木竜太氏に寄稿いただいた。

「どんなリーダーになるか」ばかり考えていないか? 結果を出す人の思考法Photo: Adobe Stock

スポーツの世界では、目標から考えるのは当たり前

 スポーツの世界で「結果を追求すること」はとても自然なことだ。
「次の試合で●●に勝つ」「予選リーグ突破」など、結果にフォーカスした目標がしばしば掲げられる。

 しかしビジネスの世界では、ともすると「リーダーとしてどのような成果を達成するか」を考えるよりもまず先に、「どのようなリーダーになるか」「どのようなリーダーシップを振るうか」といった自分の振る舞いから考えてしまうことが多い。

 それでは、なぜビジネスでは「ありのままの自分を出すリーダーになる」「部下の意見に耳を傾ける」など、自分の振る舞いから考えてしまうのだろうか。

 目指すリーダー像やリーダーシップの発揮の仕方から考えて、それが成果にうまくつながることも十分にあり得る。けれども、そもそもどのような成果を目指すのかを意識しないまま、リーダーシップを振るい続けてよいのだろうか。

リーダーシップ論でも、成果から考えることが大事

 リーダーシップ論の考え方に基づけば、リーダーシップは次の図のように整理して考えられる。

「どんなリーダーになるか」ばかり考えていないか? 結果を出す人の思考法鈴木竜太『リーダーシップの科学』(ダイヤモンド社、2025年)より引用

 この図を見ると、リーダーは「自分がいかに振る舞うか」という行動を起点に考えがちだ。だが、良きリーダーシップを発揮するためには、「求める成果→成果につながるために必要な部下(フォロワー)の行動→その行動を引き出すための自分の振る舞い」という順で考える必要がある。

 おやっと思うかもしれないが、求める成果が決まらなければ、その達成のために部下にどのように動いてもらう必要があるのかは決まらない。そして、部下の行動が決まらなければ、そのために自分がどう振る舞うかは決まりようがない。

 ではなぜ、この当たり前にも思えることが、ビジネスでは難しいのだろう。

求める成果が「与えられたもの」であることが多い

 組織の中でリーダーが任される仕事の多くは、これまでも誰かがリーダーとして達成されてきた仕事だ。例えば、営業部長が変わったからと言って、急に「これまでの取引先とのつながりを絶つ」ことにはならない。これまで成果が上がっていた仕事は、基本的には後任が引き継ぐ。

 つまり、ゼロから自分であらゆる目標を設定するわけではない。チーム内では「何を成果とするか」がなんとなく共有されていることが多く、ゼロからわざわざ目標を考える必要がない場面も多い。また、成果につなげるための方法もある程度は定まっており、そこについても改めて考える必要がないこともある。

 したがって、「求める成果」「成果につながるために必要な部下の行動」の2つは、意識しなくてもすでに決まっていることが多い。

 最初の2つのステップを考えなくてもよいのであれば、「自分がどう振る舞えば、部下がこれまで通りに動いてくれるか」だけを考えれば十分だ。さらに、特に何もしなくても部下がこれまで通りに動けるのであれば、あえて新しい対応を考える必要もない。前任のリーダーと同じように振る舞えば、ある程度これまで通りの成果は出るだろう。

 しかし、部下が変わり、チームが置かれる状況も変われば、これまでと同じやり方では成果が出なくなることがある。また、「これまで通りの成果」では足りないという状況になることもあるだろう。

 そうした時には、改めて「どのような成果を目指すのか」から考え直す必要がある。つまり、リーダーは、仕事のあらゆる場面で、細かくリーダーシップを考え直す必要はない。

「今のままではうまくいかない」と感じるところだけに目を向け、これまでとは違う行動を模索すればよいのだ。

求める成果につなげるために、試行錯誤を積み重ねる

 リーダーが部下に対して働きかけても、部下の行動がすぐに変わるとは限らない。スポーツのように点数・順位・勝敗といった明確な指標があるわけではなく、自分のリーダーシップが成果につながっているのか、判断が難しいこともあるだろう。

 リーダーが置かれた状況によっては、なぜ適切と思った自分の振る舞いが成果に繋がらないのか、あるいはなぜ部下が期待通りに行動しないのか自体がわからないことも出てくる。

 そのような時には、「なぜ部下がそのような行動をとるのか」から考えるとよい。自分の考えるように物事が進まないというのは、自分の想像とは異なる要因がどこかにあるからだ。

 幸いなことに、ビジネスは1回切りではなく、試行錯誤をしながら、結果を追求できる。リーダーは目指すべき成果を達成するために、断片的な情報を集め、現場で何が起こっているのかを具体的に想像していくことが大切だ。