再開発で魅力をなくした?
今や単なる「便利な街」程度の渋谷
ここから先は個人の解釈によって意見の違いはあるだろうが、渋谷は相次ぐ再開発によって独特の魅力を失ってしまったと筆者は考える。渋谷には百貨店のような大規模店以外にも、長年親しまれた個人店がたくさんあった。
ごく一例だが、ロシア料理の草分け的存在だった「ロゴスキー」は再開発に伴い、銀座に移転した。排骨麺・担々麺で行列のできる人気店「亜寿加」は、かつてサクラステージのある場所に立地していたが現在は同施設に入居していない(店名も変更)。
代わりに新しく増えたのは、インバウンド向けの高価格店、あるいは全国どこにでもあるチェーン店が中心だ。昭和~平成世代が抱いた、渋谷に対する魅力は、色あせてしまった感がある。
例えば、都市ジャーナリストの谷頭和希氏は、《「渋谷」は、今や単なる「便利な街」程度にしか認識されていない》《かつては渋谷でしか味わえなかった「トレンド」が、いとも簡単に地方都市でも手に入るようになった》などと指摘している(参考文献)。
また、ホットペッパーグルメ外食総研が毎年発表している「飲みたい街ランキング2025」においても、渋谷の順位は12位と東京屈指の繁華街にしては低い順位だ。これは、魅力的な個人店が再開発で消えてしまったことで、渋谷から「遊ぶ街」「飲む街」としての魅力が減っている可能性を示唆しているだろう。
渋谷は地名に「谷」という文字を含むように、坂が連続する地形であり、地下には川が多く流れている。そのため大きなビルを建てようとすると構造は複雑になりやすく、館内で迷うことが多くなり、結果として「二度と行きたくない」という感情に結びついてしまう。
こうした街こそ、「どうしてもそこでないとダメ」という目的意識がなければ、「行きたい」という人々のモチベーションを保つのが難しいのではなかろうか。かつての西武渋谷店は立地の悪さを、新進気鋭のデザイナーを取り入れたファッションや、ロフトなど独自のコンテンツを開発することでカバーし、集客に成功した。
渋谷の再開発が「若者の街」から「働く街」「大人の街」へと変わる中で、少なくとも「ただの便利な街」で終わってほしくないと思うのは筆者だけではないだろう。単に大きな箱モノを建てて終わりではなく、セゾン文化に象徴されるような時代を再びつくるくらいのインパクトが必要で、個性的な路面店を残すのもひとつの手だと考える。
・由井常彦『セゾンの歴史-上巻-変革のダイナミズム-』(1991年)
・谷頭和希『渋谷はもう「若者の街」じゃない…イケてた街が「楽しくなくなった」納得の理由』(現代ビジネス、2024年4月9日)







