農林中金1.8兆円赤字に続き、危機に陥る農協は?債券の含み損が6000億円超に膨張して、内部留保が吹き飛ぶJA続出!【国債の「巨額損失リスク」農協ランキング・ワースト10】

農林中央金庫を2024年度、1.8兆円の最終赤字に沈めた「債券爆弾」のリスクが、地域農協を襲っている。外債の運用に失敗し、債券の売却損を1兆円計上した農林中金の後を追うように、農協が保有する日本国債などの評価損が急拡大しているのだ。ダイヤモンド編集部の独自調査で、全国に約500組織ある農協の有価証券の含み損が合計6000億円超に膨らんだことが分かった。すでに債券の“損切り”に追い込まれ、赤字に転落した農協も出始めている。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『JAが大淘汰時代に突入!? 国債の「巨額損失リスク」農協ランキング』の本稿では、債券運用の失敗により、巨額損失に陥る可能性が高まっているワースト10JAを明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)

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債券運用の失敗で内部留保が9割減!
出資金が返ってこない…融資が抑制される懸念も

 農協では近年、職員が営業ノルマを達成するために本来不要な共済(保険)を自ら契約する「自爆営業」や、職員の大量離職といった問題が続出してきた。しかし、農協の“大淘汰”を引き起こしかねない大問題は、それらとは別のところから生じた。全国の農協の大部分で、保有する日本国債や地方債といった債券の含み損が膨らみ、財務を毀損するリスクが高まっているのだ。

 実は、JAグループには、農協より先に債券運用に失敗して巨額損失を出した組織がある。2024年度に約1兆円の有価証券売却損を計上し、1.8兆円の最終赤字に沈んだ農林中央金庫だ(前年度は636億円の黒字)。

農林中金の有価証券評価損益

 欧米における金利上昇によって、農林中金が保有する外国債券の評価額が下落。それにより、出資者である農協への配当が困難になるなど財務が悪化して、保有債券の“損切り”を迫られた。

 同様のことが農協でも起きようとしている。

 農協は、組合員から集めた貯金(24年度は107兆円)の大部分の運用を、上部団体である農林中金や信連(信用農業協同組合連合会)に委託してきた。ところが農林中金は、運用資金を集めるため農協に支払ってきた奨励金(上乗せ金利部分)を抑制した(具体的には、18年度から21年度の4回にわたり奨励金の利率を0.05ポイントずつ計0.2ポイント下げるとともに、上乗せ金利の対象となる貯金額に上限を設けた)。農林中金という有利な運用の委託先を失った貯金を、農協は国内債券の運用に回した。農協が独自に保有する有価証券の額は23年度、6兆4100億円で、5年前の1.6倍に達した。

 農協が保有する有価証券の8割超が、国債、地方債、社債だ。上図の通り、日本の長期金利が上昇するにつれて債券の時価は下がり、農協の有価証券評価損額は24年度、6180億円まで膨らんだ(ダイヤモンド編集部の調査で評価損額が確認できた455JAの合計。25年4月現在の全農協数は496)。農協の運用をサポートする金融機関関係者は「さらに金利が上昇すれば、農協の有価証券の含み損は1兆円を超えかねない」と話す。

 すでに国債などの損切りに追い込まれ、巨額損失を計上するケースが出初めている。

 上表の5JAのうち、債券の損切りに踏み切った愛媛県のJAおちいまばりは24年度、有価証券売却損を48.5億円、 JA高知市は43.2億円、JAみやぎ登米は37.6億円計上。それぞれ利益剰余金は77%減、91%減、79%減となっており、出資配当ができなくなっている。出資者である組合員にとっては看過できない事態といえる。

 こうした事態に陥った際、農協は「自己資本比率は低下するが、JAバンクの自主ルールで定める基準8%は上回っている」と説明することが多い。確かに、24年度の自己資本比率は、JAおちいまばり10.54%、 JA高知市11.90%、JAみやぎ登米10.19%となっている(この場合の自己資本比率は、リスクに応じて資産の重み付けを行ったものだ。農協は規制上、海外に営業拠点を持たない金融機関〈国内基準行〉であるため、満期目的の有価証券の含み損も、その他有価証券の含み損も自己資本比率に反映されない。なお、上表にある自己資本比率は、単純に純資産を総資産で除したもので、その他有価証券の評価損益が反映されている)。

 JAバンクの自主ルールでは、農協の自己資本比率が8%を下回ると「要改善JA」に指定され、農林中金の指導の下で経営改善に取り組むことになる。さらに、同比率が6%を下回ると融資を制限される。上記の3JAの自己資本比率は、要改善JAに指定されるほどの危険水準ではないということだ。損切りを行えるだけの財務余力があった、ともいえる。

 むしろ、より危機的なのは、損切りに踏み切っていない農協かもしれない。ダイヤモンド編集部は、農協の経営リスクをあぶり出すため455JAの有価証券の「含み損リスク」を独自に算出した。すると、上表下段のJA埼玉ひびきのや静岡県のJA大井川のように、含み損リスクが、損切りする前のJAおちいまばり、 JA高知市、JAみやぎ登米を上回る農協が多数あることが判明した。

 次ページでは、独自ランキングを初公開し、債券運用の失敗で、巨額損失に陥る可能性が高い農協を明らかにする。過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。次に淘汰される農協はいったいどこなのか。