付け加えて実際にレンコンのアメリカ向け輸出を行っている立場から言えば、それ単体でコスト以上の利益が上がるわけでもない。ここで誤解していただきたくないのは、これらの制度や基準が悪である、というわけではないことです。むしろ、日本の農産物の品質と安全性を世界にアピールするためには、こうした制度が正しく整備され、信頼されていることこそが前提条件になるからです。
問題なのは、その制度の運用が、時に過剰なまでの事務負担や情報の断絶を生み、現場の挑戦を阻んでいることです。こういう時こそ農林水産省の出番です。農水省には、ぜひ守る農政から攻める農政への一歩として、こうした非関税障壁の緩和に向けた国際交渉を主導していただきたいと思います。
現場の声をすくい上げ、現実的な対応策を共に考えていく。そんな農水省であってほしいし、私はそのような省庁としての役割を信じ、期待しています。
輸出には物流や制度など
総合的なインフラ整備が必要
また、輸出に伴う物流や鮮度保持のインフラ整備も不可欠です。アメリカのように国土の広い国では、冷蔵輸送、現地でのラストワンマイルの配送網、そして適切な卸売チャネルが整っていなければ、どんなに良い農産物をつくっても消費者に届けることができません。
輸出を前提とした農産物の開発、検疫に対応した生産・包装体制、そしてグローバル市場に通用する流通戦略。このような課題の克服は、農家や農業法人だけでは到底成し遂げられません。ここでも、農水省をはじめとする公的機関、そして商社や物流企業、現地のバイヤーなどとの本格的な連携が必要です。
「農業のグローバル展開」とは、単なる輸出拡大ではありません。それは、制度、物流、商習慣、文化のすべてを横断し、日本の農産物が世界に通用するための設計図を描くことにほかなりません。そのための第一歩が、非関税障壁の解消であり、制度の運用改善であり、農水省の外交的イニシアチブなのです。
アメリカ市場は大きく、そして遠い。しかし、その距離を縮めるための努力を重ねることが、農業の未来を拓く道だと私は信じています。
アメリカ向け農産物が
関税ゼロになったら?
コメ関税がゼロになり、アメリカ側も農産物の輸入時の関税をゼロにしたら、日本農業に何が起きるのか。日本からアメリカへ農産物を輸出する場合を想定して、考えてみます。







