オーガニック写真はイメージです Photo:PIXTA

農薬を使わない有機野菜などがもてはやされているが、無農薬栽培は環境にやさしいように見えて、じつは農薬散布するよりも環境負荷を増大させるおそれがある。にもかかわらず、農水省が有機農業を推進するのは、いったいなぜなのか――。※本稿は、有坪民雄『誰も農業を知らない2 SDGsを突きつめれば、日本の農業は世界をリードする』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。

無農薬はサスティナブルにあらず
多くの人が気づかない盲点

 農薬を散布するよりしない方がいいと思う方もおられるでしょう。私はそうは思いません。なぜかというと農薬散布の方が無農薬より地球にやさしい、サスティナブルなことも多いからです。

 農薬散布の方がサスティナブルである。「そんな馬鹿な!」と思われる方も多いかもしれません。なぜ農薬散布がサスティナブルかというと、第一に病害虫と雑草の繁殖を抑えて生産量を高水準で安定させます。すると農地自体が少なくてすみます。

 無農薬で作物を栽培した時の減収率は、作物によって大きな違いがありますが、仮に50パーセントの減収率だとしましょう。

 農薬を使って100の作物を生産できていたところを無農薬にすると50しか収穫できないとします。すると100の作物を作るには2倍の農地が必要となります。

図表:農薬を使わなかった場合、収穫量はどうなる?同書より 拡大画像表示

 農地が倍必要になると言うことは、農地を耕したりするのに2倍の作業量が必要で、機械を使うにせよ資材を使うにせよ、2倍の資源が必要となります。たとえばトラクターなら、燃料代が2倍になり、それだけ多くの化石燃料を消費するわけです。農薬を製造・流通・散布させるよりも数倍は多くの化石燃料を消費するのではないでしょうか?