グレート・アントニオに対しては
“やる”ことを選んだアントニオ猪木
不意打ちの顔面蹴りといえば、77年12月8日に蔵前国技館で行われた、アントニオ猪木vsグレート・アントニオを思い出さずにはいられない。
この試合で猪木は、小馬鹿にするようなパフォーマンスに終始するグレート・アントニオが、四つん這いになったところで顔面を蹴り上げ、さらに顔面蹴りとストンピングで完全KO。わずか3分49秒、レフェリーストップで試合を終わらせたが、師匠・猪木によるこの攻撃を佐山はどう感じたのか。
「あれも本来やってはいけないことです。あの時は、相手がまともにプロレスをやろうとしていなかったですし、控室から様子がおかしかったから、途中でキレてしまったんでしょう。
もしくは、猪木さんはやってはいけないということは十分承知のうえで、メインイベンターだから“やる”ことを選んだんでしょうね。なぜなら、全国にテレビ放送されている蔵前国技館のメインイベントが、相手のしょっぱさで壊されるわけですから。
猪木さんの実力だったら、グレート・アントニオのよさを引き出して、なんとか観られる試合にできたかもしれない。でも、あんなしょっぱい相手に猪木さんが苦戦するシーンをつくってしまったら、猪木さんの名前が汚れる。
だからあれは『アントニオ猪木』という名前を守るため、ひいては新日本を守るため、プロレスを守るために、やってはいけないことだけど、やったんだと思います。
『証言 プロレス界ケンカマッチの真実』(佐山聡・藤原喜明・川田利明・船木誠勝ほか、宝島社)
プロレスを壊そうとする相手からプロレスを守るためにやらなくてはいけない時ってあるんですよ。タイガーマスクvsレス・ソントン(82年5月25日、静岡産業館)の試合後、僕がハイキックでレス・ソントンをKOした時がそうです。
あれはレス・ソントンがジャーマンスープレックスで負けたのに、なんのダメージもないかのように、すぐに立ち上がって帰ろうとしたんです。彼にも意地があったんでしょう。
でも、それはプロレスを壊す行為だから、レフェリーのミスター高橋さんに、『あの野郎、ジャーマンを受けたのにピンピンしていやがる。やっちゃえ』と言われて、僕もやったんです。
やってはいけないことなんですが、焚きつけた高橋さんが悪い、ということにしておいてください(笑)」







