当初は別のカードが組まれていたが、ジャッキーとの一騎打ちを要求し、舞台裏ではシュートマッチをやると公言していたという。

「もちろん、ケガをさせられたことがトリガーになったことは間違いないんですけど、そんなに短絡的な話ではないんですよ。当時、ジャパン女子は慢性的な経営不振に陥っていて、選手、スタッフにギャラが支払われなくなっていた。『柔道ではカネにならない』という理由でプロレス入りした神取にとって、お金がもらえないというのはあり得ない状況で、ギャラの未払いが始まってからは、試合に出ないことも珍しくなくなっていました。

 一方でジャッキーさんは超VIP待遇でジャパン女子に入団しています。だから、これは想像でしかないんですけど、未払いが始まってからも、ある程度のお金はもらっていたと思うんですね。

 いや、ギャラがストップしていたとしても、それまでかなり高額なギャラをもらっていたので、困るようなことはなかったと思うんですよ。レフェリーとコーチを務めていたグラン浜田さんもそうです。ギャラについてはわかりませんけど、浜田さんは当時、ホテル暮らしをしていて、そのお金は会社が払っていました。

当時の神取は
“正義のヒロイン”だった

 そんな状況下だったので、神取がジャッキーに対して不信感を抱くことは当然ですし、あの試合の前までは、私は神取の言動のほうが正しいと思っていましたからね。

 当時、シュートマッチがどんなものかはわかりませんでしたけど、柔道仕込みの関節技でジャッキーさんの鼻を折ってくれるんじゃないかと、期待はしていましたね。

 神取は私にとって正義のヒロイン的な存在だった。なんでシュートマッチになるとわかっているのに周囲は止めなかったのかと、よく聞かれるんですけど、そういう思いがあったから、我々、現場のスタッフは期待感こそあれ、止めようとは考えもしなかった。

 会社の上層部にはまた別の思惑があった。

 上としてはジャッキーさんも大事だし、神取にも辞めてもらっては困る。だから、リング上で思う存分、闘ってもらったら、きっとわかりあえるんじゃないか、という甘い読みでこの試合を止めようとしなかった。シュートマッチでこれまでの遺恨を精算して、またイチからやりなおそう、ということなんですけど、まぁ、あり得ないですよね(苦笑)」