決して注目度は高くなかった
ジャッキーvs神取の一騎打ち
当時の女子プロレスの状況を知らない方にはピンと来ないかもしれないが、ジャッキー佐藤は70年代後半にビューティ・ペアで一大ブームを巻き起こし、プロレスの枠を超えて、日本中の誰もが知っている大スターだった存在。
ブームから5年以上が経過していたが、その知名度は絶大であり、彼女の復帰なくしてジャパン女子の旗揚げはあり得なかった。特別扱いされるのは当たり前のことなのである。
その一方で会社が困窮している状況にもかかわらず、常にスター然とした振る舞いをするジャッキーは、団体内で浮いた存在だった。
裏では彼女のことを「J」という隠語で呼び、陰口を叩いているところに彼女が来ると、「Jが来た!」の一言でみんなが知らんぷりをするような微妙な空気感まであったという。たしかに神取にガチンコで制裁してもらいたいと、スタッフたちが思っても不思議ではないし、ジャパン女子自体が完全に八方塞がりの状態になっていたことは間違いない。
そして迎えてしまった、試合当日。
一応、神奈川県大和市という首都圏での興行ではあったが、決してビッグマッチではない。観客の数も多くなければ、取材に訪れたメディアも『週刊プロレス』と『週刊ゴング』のみ。いわゆる、なにげなく行われた“平場”の大会だった。
ジャッキーvs神取の一騎打ちも、大々的に宣伝されたわけではないため、観客は2人の間に遺恨があることすらほとんどわかっていない。まさに日常すぎる風景のなかに、いきなり非日常の劇薬がぶち込まれたことになる。
のちに神取はこの試合について、こう語っている。
〈凄惨なひどい試合みたいに言われているけど、お客様あっての試合だっていうのはわかってるから。(腕ひしぎ逆十字は)まだあえて極めにいってないの。極まるか極まらないかは、数ミリの世界だから。調整がわかるんだよね。だから『ホントはここで勝負は終わってるんだよ』って、相手にわからせたうえで、まだ終わらせない(笑)。じわじわと恐怖感を与えないといけないと思っていたから〉(『俺たちのプロレスvol.6』双葉社)







