戦略3:組織に属しながら、外も育てる

 3つ目は、組織に籍を置きながら、並行して外部の領域も開拓するという戦略だ。現実解として、多くの人が選ぶ形でもあるだろう。

 本業で生活基盤を確保しながら副業を育てる。あるいは組織内で新規事業や新しい専門領域を開拓する。いきなり独立はしないが、「いつでも動ける状態」は作っておく、という発想だ。

 ある大企業の中堅社員はこう言った。「正直、独立は怖い。でも会社に全部預けるのも怖い。だから“選べる状態”だけは作っておきたいんです」

 この感覚は、いまの時代の空気をよく表している。メリットは、まず生活の安定だ。固定収入があるだけで、探索に使える心理的・時間的な余裕ができる。加えて、組織内の情報と人脈を使える。顧客の変化、規制の方向、現場の課題感といった1次情報は、外に出ると途端に手に入りにくくなる。さらに、失敗してもすぐにゼロにならない。セーフティネットがあることで、挑戦の“振れ幅”を取りやすい。

 一方で、負荷もはっきりしている。最大の問題は、時間と集中力の分散だ。本業が忙しくなれば探索は後回しになるし、探索に力を入れれば本業の評価が揺らぐ。

 次に、組織との摩擦が起きやすい。副業規程、情報管理、利益相反。制度上は可能でも、運用は必ずしも滑らかではない。そして最も怖いのは、両方が中途半端に終わることだ。「準備中」が長引き、外は育たず、本業も守りに入る。結果として、どちらにも賭けられない状態に陥る可能性がある。

 理屈の上では合理的だ。しかし実行には相応の(単純計算で2倍の!)体力と設計が要る。両にらみは安全策に見えるが、放っておくと消耗戦になる。

 安定を取りながら可能性も残す。魅力的な戦略だが、「なんとなく両方」は、一番危ういようにも思える。

どれが正解か

 ここまでで、3つの戦略を整理してみた。

 しかし、「これが正解だ」と断言することはできない。理由は単純だ。いまは均衡点が刻々と動いているからだ。安定した時代であれば、成功パターンは再現できる。だが均衡点が移動している局面では、正解は後からしかわからない。

 それでも、1つだけ確かなことがある。どの選択肢を取るかは、自分で決めたほうがいい。

 意識して組織に残る人と、怖くて動けない人では、同じ場所に立っていても意味がまったく違う。独立を選んだ人と、なんとなく流されて、ベンチャーに転職した人も同様だ。外形は同じでも、能動と受動のあいだには大きな差がある。カオスの時代に正解は固定されない。流れがどこに向かうかも、今は誰にもわからない。だが、立ち位置だけは選べる。

 あなたが今いる場所は、自分で選んだ場所ですか。