しかし、食事制限をすると逆に、ネズミが回し車で走る頻度は増える。

 食べた後の消化を促すために回し車で走るということも考えられそうだ。「たくさん食ったし、いっちょ腹ごなしに走るか」というわけだ。しかし、1日2回(10~11時と16~17時)だけ餌を食べられるようにしたラットでは、餌を食べる前のほうが、食べた後よりも回し車でたくさん走った(図1-15)。ネズミは、食べたから走るのではなく、食べる前に走るのである。そのようなわけで、「腹ごなし」仮説も厳しい。

図1-15同書より転載 拡大画像表示

 つらいことがあると駆け出したくなる人もいるだろう。ひょっとして、ネズミもストレスを感じているから走っているのか?これについてはある程度有力とされている。

 ゴールデンハムスターにストレスを与えると、回し車で走る頻度が増えるという報告がある。

回し車で走る頻度と
ストレスの関係性

 スイスで行われたこの実験では、個別飼育のハムスターに2種類のストレスのいずれかを10分間だけ与えて、元の飼育ケージに戻した。1つは実験者の手の上で触られるというマイルドなストレスで、この体験をすると24時間の回し車での走行量は前日に比べてやや増えたものの(9匹平均で11%増加)、統計的に意味がある効果とはいえなかった。

 もう1つのストレスは、捕食者であるフェレットのいるケージに滞在するという恐怖である(もちろん、フェレットにかじられないようにハムスターは鉄格子の檻に入っている)。この恐怖ストレスによって、前日に比べて大幅に走行量が増えた(9匹平均で44%増加)。